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透析を始めたら、体重管理が重要!毎日体重をチェックするのはなぜ?

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 透析療法を導入すると、日常生活において医師からさまざまな点を注意されることになります。しかし、予後を少しでも良好にして、生活の質を落とさないためにはこれを守る必要があります。

 透析患者さんが注意しなければならない点の一つに「体重管理」があります。日頃から体重を量っているという人もいるでしょうが、透析患者さんは毎日体重を量らなければならなくなります。

 そこで、透析患者さんにとって毎日の体重管理がなぜ重要なのかについて説明します。

透析と体重

 体重が増加しすぎることは、透析を受けていない人にとっても良くないことであるということは言うまでもありません。しかし、透析患者さんの場合はわずかな体重増加が大きな問題になる恐れがあります。

透析患者さんの体重増加の原因

 一般的な「肥満」の原因は、食事内容や運動不足による内臓脂肪の蓄積です。透析患者さんは透析間の1~2日で数kg単位の体重増加が見られるのですが、一般的な肥満とはその発生原因が大きく異なります。

 透析患者さんの体重増加の最大の要因は「水分」です。透析療法を導入しているということは、腎機能が大きく低下しているということでもあります。腎臓の役割の一つに「余分な水分を尿として排出する」というものがあり、腎機能が低下するとこの役割も十分に果たされなくなります。

 尿として余分な水分を排出する役割が果たされないということは、体に余分な水分が溜まるということでもあります。一般的な成人の1日の排尿量は1,000~2,000mlであると言われており、仮に全く尿が出なくなるとその分だけ体に水分が残り続けることになります。

透析量の目安「ドライウェイト」と体重増加

 透析患者さんは低下した腎機能によって体に溜まってしまった余分な水分を、人工透析によって取り除きます。この時、どれだけ多くの水分を取り除くかを決めるのが「ドライウェイト」と「透析開始前の体重」です。

 ドライウェイトとは、体の中に余分な水分が無い、水分が適正な状態の体重のことを言います。例えばドライウェイト60kgの人が、透析を開始する時の体重が62kgだとすれば、その差2kgが「取り除くべき水分量」であるということになります。

体重が重い=水分量が多いということ

 一般的に、透析間の体重増加は「ドライウェイトの3~5%」が理想的であるとされています。例えば体重60kgの人であれば、1.8~3.0kgが理想的ということになります。ドライウェイトの5%を超える体重増加は、体重が増えすぎ、つまり「水分量が適正な状態よりも多い」ということになります。

 そして、水分量が適正よりも多いことにより、いくつかの弊害が生じるのです。

透析時の除水量が多くなる

 透析の際の取り除く水分量、つまり「除水量」は透析開始前の体重とドライウェイトの差で求められます。透析前に量った体重がドライウェイトよりも大きく上回っていれば、それだけ多くの水分を数時間(1回の透析時間)で取り除くことになります。

 人工透析によって水分を取り除くということは「血液量を減らす」ということでもあります。そして、透析前の体重がドライウェイトより多くなればなるほど、1回の透析時間における除水量も多くなるということです。言い換えれば「短時間で急激に血液量が減少する」ということになります。

 透析による合併症の一つに「低血圧」が挙げられます。これは透析により血流量が減少し、血圧が低下することが原因であると考えられています。量った体重とドライウェイトとの乖離が大きいほど1回の透析で一気に除水され、血流量が一気に減り、血圧が大きく低下します。場合によっては血圧低下により透析を継続すること自体が困難になるケースもあります。

血圧が上がり、腎臓や心臓に負担がかかる

 前述の通り、余分な水分があるということは血液中の水分が多い、つまり血流量が多いということになります。日頃から余分な水分が多く血流量が多いということは、それだけ「血圧が高い」ということです。

 血圧が高いことは、腎臓や心臓への負担が増える原因となります。腎臓に負担がかかり腎機能が低下し、水分排出能力が低下して余計に血圧が上がる、という悪循環を生み出すことになります。

透析間の体重増加を抑えるためには?

 透析間の体重増加の原因は水分ですが、生きていくためには水分摂取が欠かせません。問題なのは「体内の水分が増えすぎる」ことであり、透析や腎臓のために注意すべきポイントを押さえて実行する必要があります。

体重を厳格に管理する

 水分量が多いことは「体重増加」によって判明します。そのために、透析患者さんは毎日の体重管理が重要なのです。透析は1~2日おきに受けるので、1日の体重増加でも死活問題となります。水分に関する日頃の行動が正しいかどうか、体重を量ることで知ることができるのです。

水分を管理する

 尿量が減少し、余分な水分が体重増加につながる透析患者さんにとって「体重の管理=水分の管理」であるとも言えます。医師から指示されている透析間の体重増加を許容範囲に抑えるためには、いかに摂取する水分量を管理できるかが鍵を握っています。

 ここで注意すべきなのは「摂取する水分=飲水量」ではないということです。なぜなら飲み水以外にも食事から摂取する水分量も無視できないからです(さらに食べ物が体内で燃える際に発生する「代謝水」も存在する)。そのため水分制限において注意すべきなのは「飲水量を管理する」だけでなく「食事に含まれる水分を管理する」ことも必要になります。

 飲水量は、指示された分量をきちんと守ってください。冷たい飲み物ではなく熱い飲み物にするなどして、飲む量を減らす工夫をしましょう。また、うがいの際にもわずかですが水分摂取が発生することを意識してください。

 食事における水分量も意識する必要があります。まず「汁物」はできるだけ控えめにしましょう。また、主食となる食べ物のうち「ごはん」「麺類」は水分量が多いです。これを「パン」や「おもち」にすれば、主食による水分摂取量を減らすことができます。

塩分を管理する

 透析患者さんの水分管理のためには、水だけでなく「塩分」の摂取制限も重要なポイントになります。塩分を摂取するとのどが渇いて飲水量が増加する可能性が高いです。つまり、透析患者さんの体重管理のためには「減塩」が必要不可欠ということになり、1日の塩分摂取量の目安は6g未満です。

 具体的な減塩のための工夫ですが、第一に「調味料を見直す」ことです。しょうゆやソースには塩分が多いので、直接かけるのではなく小皿にとってつけて食べるようにしましょう。減塩タイプの調味料もおすすめです。また、酢やレモン汁などの酸味、ねぎやしそなどの香味野菜を活用するのも良い方法です。

 味が濃い目の「外食」も、塩分制限にとって問題となります。塩分を減らすためには単品ではなく定食・セットメニューを選択し、塩分の多いものは残してください。減塩タイプの調味料を持ち込んで使用するのも良いでしょう。

水分管理ができているかどうかをチェックするために体重管理を徹底

 透析患者さんの体重管理は、健康を損なわないようにきちんと水分管理ができているかどうかをチェックするために重要な行動となります。体重が予想よりも重くなっていれば水分のとりすぎということになり、飲水や食事を見直す必要があります。毎日きちんと体重を量り、飲水や食事が適切であることを常にチェックしましょう。

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