検査

尿検査で腎臓の異常を早期に発見!

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

現在、成人の国民8人に1人は、慢性腎臓病(CKD: chronic kidney disease)を患っており、新たな国民病と言われているのを耳にしたことはありますか?
腎臓の機能は、いちど失われると回復することがない場合が多い臓器です。さらに腎臓は“沈黙の臓器”といわれ正常の15%以下の機能になるまで症状が現れないのです。
近年では、医療技術が進歩し、早期に治療を開始することで腎臓の機能の低下を防いだり、遅らせたりすることが可能となりました。腎臓の機能の低下を早期に発見し、早い段階から腎臓の機能が悪化しないようにしていくことが重要です。

症状が現れないCKDを早期に発見するにはどうしたらいいの?

定期的に健康診断を受けることでCKDを早期発見することがとても大切です。
実際、CKDの患者さんのうち70%以上の方が健康診断をきっかけとして病気がわかったというデーターがあります。

健康診断の結果をみてもよく分からない方、どの結果をみたらいいのか分からないという方が多くいらっしゃるのではないでしょうか?
今回は、腎臓病の早期発見につながる尿検査についてご紹介していきます。

腎臓病と検査

症状がなくても検査を受けましょう!

腎臓は、肝臓と同様に“沈黙の臓器”といわれています。特にゆっくりと進行する慢性腎炎などでは、何の症状もないことがほとんどです。なので、職場や地域の健康診断などを利用して、年に1度は尿検査や簡単な血液検査を受けることをおすすめします。

腎臓病の検査とは?

腎臓の検査は、大きく分類すると5つに分類されます

  • 尿検査
  • 血液検査
  • 腎機能検査
  • 画像検査
  • 腎生検

もちろんすべての患者さんが5つすべての検査を必要とするわけではなく、必要に応じて侵襲性(患者さんに対する負担)の少ないものから実施していきます。

腎臓の働きとは?

大きく分けて4つの働きがあります。

  • 老廃物の排泄
  • 血液の酸性・アルカリ性の調節(pH)
  • 水分量の調節
  • ミネラル(ナトリウム・カリウム・カルシウム)濃度を一定に調節

全身を流れる血液は、各臓器や組織に栄養を運び、代謝産物や老廃物を受け取って腎臓へ到着します。腎臓では、毛細血管が毛糸玉のようになった「糸球体」というところで、濾過されます。濾過された液(濾液)は、尿のもとになるので「原尿」と呼ばれ1日に150L作りだされています。
原尿の中には、ブドウ糖やアミノ酸などの栄養や各種ミネラルが含まれています。そのため、尿細管という部分で原尿の中にある必要な物質をもう一度、体の中に取り込みます(99%再吸収される)。また、尿細管と言われるところから尿中へ排泄される物質もあります。こうして調整された後に残った尿が膀胱に溜まり、最終的に体外へ排泄されます。

尿検査

ほとんどの腎臓病は、たんぱく尿あるいは血尿のどちらか、あるいは両方を呈するといっても過言ではありません。尿はもともと捨てられるものですから、採取にあたり、針を刺すなどの負担がなく検尿は非常に簡単でコストもかからない検査ですが、腎臓の状態を簡便かつ的確に判断する方法として、もっとも診断的価値のある検査の1つです。
尿検査には早朝起床後第1回目の尿、すなわち早朝尿を調べる方法、外来受診時の随時尿を調べる方法がありますが、早朝尿を用いることが勧められています。

早朝尿が勧められる理由とは?

  • 就寝によって飲水の影響が少ないこと
  • 通常尿は、弱酸性で濃縮されているため細胞成分や円柱などを観察しやすいこと
  • 体位により生じる起立性のたんぱく尿や血尿を見分けることができること

治療の必要のない異常を除外できるため、早朝尿が勧められています。
また、24時間の蓄尿を調べることが必要になる場合があります。

蛋白尿

慢性糸球体腎炎や糖尿病性腎症など、腎臓に障害があると尿中に蛋白が漏れ出てしまいます。また、血液の病気などで血液中の蛋白質が異常に多い場合にも、尿に蛋白が出てきます。

アルブミン尿

健常人でも1日40~80㎎の尿たんぱくが尿中に排泄されており、その上限は150㎎といわれています。そのたんぱく尿の成分のうちアルブミンというたんぱくがもっとも多く、全体の40%を占めています。アルブミンは腎臓の濾過器である糸球体の障害を評価する指標となっています。たんぱく尿の判定は、アルブミンに対し感受性がよいとされている試験紙法を用い、まずスクリーニング検査を行います。
健康な場合には陰性(-)となります。尿試験紙は、蛋白尿濃度を調べており、尿蛋白1+では30㎎/dL、尿蛋白2+では100㎎/dLとなります。仮に、1日あたりの尿量を1Lとすると、尿蛋白1+の場合は300㎎/日、尿蛋白2+では1g/日となります。
健康な場合の蛋白尿は、100㎎/日以下です。特に1g以上の蛋白尿では、腎機能がどんどん低下し、透析に至る患者さんが多くなります。尿蛋白2+以上では、腎炎などの糸球体障害が強く疑われますため腎機能専門医の診断を受けるとよいでしょう。

尿蛋白陰性(-)

尿蛋白100㎎/日以下

尿蛋白1+

尿蛋白300㎎/日

尿蛋白2+

尿蛋白1g/日

尿試験紙の検査では、濃度を調べるために、非常に濃い尿の場合には、健康であっても尿蛋白陽性となります。また、逆に薄い尿の場合は、異常を見逃す危険があります。出来るだけ条件のよい尿で、検査を行うことが重要です。

糖尿病性腎症では、一般にアルブミン尿の段階であれば、腎障害を治すことができるのですが、顕性蛋白尿の段階では、元に戻すことはできないと考えられています。糖尿病では、定期的にアルブミン尿の有無を検査して、糖尿病性腎症を早期に発見・治療することが重要です。

微量アルブミン尿

この検査はとくに糖尿病性腎症や高血圧性腎障害を早期に発見できるという利点があります。以前のたんぱく尿検査では、尿にかなりのたんぱく(5㎎/㎗以上)が出なと検出できませんでした。微量アルブミン尿検査により一般のたんぱく尿検査より非常に微量のアルブミン尿を検出できるようになり、糖尿病性腎症や高血圧性腎障害などの早期発見が可能となりました。尿アルブミンは1日に30㎎を超えると異常とされています。

血尿

腎臓病には血尿がでる疾患が多数あります。
尿に血液成分である赤血球が出ている状態を血尿と呼びます。目で見て血液の混入がわかる肉眼的血尿と、顕微鏡を使って確認しなければ赤血球の混入がわからない顕微鏡的血尿に分かれます。腎疾患においては、顕微鏡的血尿の頻度が高いのですが、急性糸球体腎炎や急速性進行性糸球体腎炎、慢性糸球体腎炎のなかのIgA腎症では、肉眼的血尿を認めることがあります。
血尿のスクリーニング検査として試験紙法による潜血反応が用いられていますが、状態によっては、時に間違って陽性になる場合(偽陽性)があるので、最終的な判断は尿の沈殿物(尿沈渣)を顕微鏡で観察をおこないます。
また、糸球体疾患などの腎実質由来の血尿では、赤血球が糸球体毛細血管の壁を通り抜けるときや尿細管を流れ下っている間に、赤血球の形が変形することが予測されます。実際、尿沈渣の赤血球の度合いから、血尿が糸球体疾患に由来するものか、腎以外の尿路疾患に由来するものかをある程度判断することが可能です。

白血球尿

膀胱炎や腎盂腎炎などの尿路の感染症では、尿中に白血球が出現するため診断の参考になります。

尿糖

血液中のブドウ糖(血糖)は、糸球体で原尿に排泄された後に、尿細管ですべてが再吸収されます。しかし、血液中のブドウ糖の濃度が高すぎると再吸収が追い付かなくなり、尿にブドウ糖が排出されてしまいます。これを「尿糖」いい、糖尿病の診断に役立ちます。健常人では、血糖値は160㎎/㎗を超えることはないので尿糖は出現しません。しかし、糖尿病や耐糖機能障害が原因で血糖値が160~180㎎/㎗を超えると、近位尿細管でブドウ糖の再吸収をしきれなくなり尿糖が出現します。逆に糖尿病がなくても(血糖値が高くなくても)近位尿細管に障害がある場合、尿糖がみられる場合があります。これを腎性糖尿といいます。

円柱

円柱は、尿細管から分泌されているTamm-Horshallたんぱくと尿中の血漿たんぱくが尿細管のなかで沈殿形成されたものです。円柱にはさまざまな形や成分があります。尿細管上皮細胞の成分を含む顆粒円柱、赤血球や白血球を含む赤血球円柱や白血球円柱などは腎実質の障害をあらわします。ネフローゼ症候群では脂肪円柱が陽性になります。

尿比重(尿の濃さの指標)基準値:1.015~1.030

尿比重は、尿の中に含まれる溶質の質量を示しています。
病院では、腎臓の濃縮する力が正常か異常か、脱水状態か、水分を過剰に摂取していないか、異常物質の排泄はないかを知るのに有効な検査です。健康な人の尿は、食塩と尿素含量に、異常な尿では蛋白、糖などの含量に影響されます。
値の見方…低比重で尿量が多い:尿崩症
     低比重で尿量が少ない:腎障害

ケトン体(脱水の指標)基準値:2.0㎎/dl以下、試験紙法では(-)

ケトンタイはアセトン、アセト酢酸、β-ヒドロキシン酪酸の総称です。糖質の供給が不十分(飢餓)だったり、組織内でのグルコースの酸化が低下する(糖尿病)と、肝臓で脂肪を分解し生成され、末梢組織で利用される。肝臓からのケトン体供給量が組織の処理能力を超えると血中ケトン体が増加し、尿中に排泄される。
異常をきたす疾患:代謝性疾患(糖尿病、腎性糖尿)
         飢餓状態
         代謝亢進(甲状腺機能亢進症、発熱、妊娠)

pH(酸性・アルカリ性のバランスの指標)基準値:5.5~6.0

体の中で生じた酸は二酸化炭素(CO2)として呼気に、H+として尿中に排泄されます。食事などによる変動が激しいが、持続的な酸性尿、アルカリ性尿は病気が考えられます。肉食では酸性、菜食ではアルカリ性に傾きます。

尿検査で早期発見を!

尿にタンパク質や血液が漏れ出ていないかを検査します。ただし、発熱や激しい運動などでもこれらが出ることはあるので、1度検出されたら必ず2~3度繰り返して検査して確認しましょう。
腎臓病は、一般的に自覚症状ないことから、健康診断などで尿検査をしなければ病気に気付かないことが多くあります。尿はもともと捨てられるものですから、採取にあたり、針を刺すなどの負担がありません。また、酸性・アルカリ性の指標となるリトマス試験紙のように、尿試験しで迅速かつ安価に検査でき、たいへん有用な検査です。
蛋白尿と血尿の療法とも陽性が続く場合は、腎臓専門医を受診しましょう。腎炎は自覚症状がないため、気づかない間に進行して、手遅れになることもあります。

定期的な健康診断を受けましょう!

腎臓病は早期に発見することがとても重要です。蛋白尿を指摘されたことがある方は薬局で市販されている検尿テープを使って自宅でも検尿するとよいでしょう。
尿検査で腎臓の機能低下を早期に発見し、腎臓専門医に相談しましょう。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

SNSでもご購読できます。