症状

むくみは、腎臓の機能低下が原因かも!腎臓とむくみの関係とは?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

 腎臓の機能が低下すると、全身にさまざまな症状が現れるようになります。そんな腎機能低下による症状の一つに「むくみ」が挙げられることをご存知でしょうか。一般的なむくみの原因はいくつか考えられますが、あなたが現時点でむくみの症状を自覚しているのであれば、それは腎臓の機能低下を見過ごしている可能性も十分に考えられます。

 腎臓機能が大きく低下してしまえば、最終的には人工透析を受けなければならなくなるケースもあり得ます。腎臓に限った話ではありませんが、病気や臓器の機能低下は早期発見・早期治療が重要です。症状に気が付きにくい腎臓の病気、それをいち早く察知できるのであればそのチャンスはものにしたいところですね。

 人工透析が必要なほど手遅れになってしまわないように、腎臓の機能低下によってむくみが生じる関係性について解説します。

むくみとは何か?

 まず最初に、そもそも「むくみとは何か?」ということについて簡単に説明しておきます。よくある事例としては「朝起きると顔が腫れたようになっている」「夕方になると足が太くなったように感じる」といったケースがむくみです。

 これは一般的な「肥満」とは異なり、皮下脂肪や内臓脂肪によって体が太くなっているわけではありません。むくみの原因は、体内の余分な「水分」や「老廃物」などが排出されずに溜まることです。

 本来、全身の水分や老廃物は静脈やリンパ管によって回収されて、腎臓で濾過されて排出されます。ところが、何らかの理由でそれらを回収する動きが弱くなると、回収されるべき余分な水分や老廃物はその場に留まってしまいます。これにより体がむくんでしまうのです。

 水分の蓄積によって実際に体重の増加を起こすので、人によってはむくみを「太った」と勘違いしてしまうこともあります。特に、短期間で数kgの体重増加があった場合、脂肪による肥満ではなくむくみを原因としているケースが多いです。数字については個人差がありますが、数日で3kg前後の体重増加があれば、むくんでいることを疑う必要があります。

なぜ腎臓の機能低下でむくみが生じてしまうのか?

 腎臓の病気などによって腎機能低下を起こし、それを原因としてむくんでしまうことを「腎性浮腫(浮腫=むくみ)」と言います。体がむくんでしまう原因はいくつか考えられますが、腎臓によるものの場合は大きく分けて「濾過機能の低下」「タンパク尿(低アルブミン血症)」が考えられます。

濾過機能の低下

 腎臓に関連するむくみの原因として第一に考えられるのは「腎臓の濾過機能の低下」です。腎臓は体内の余分な水分や塩分、老廃物を濾過して体外に排出するという働きを担っています。腎臓で血液が濾過され、不要な水分や老廃物は「尿」として体の外に排出されます。腎臓の機能が低下するということは、この濾過機能が低下してしまうということです。

 つまり本来であれば濾過される不要な水分や老廃物が腎臓で十分に濾過されず、体内を循環する血液中に残留してしまうということになります。循環している血液にとって不要な水分や老廃物が取り除かれずに循環するということは、血行を悪くする原因となります。血行不良が進んでしまうことにより、水分や老廃物が体に溜まってしまい、むくんでしまうのです。

 腎臓の病気が進行すると、水分や、水分を溜め込む性質があるナトリウムを排出するためのホルモンの量が減少します。これによりむくみも悪化しますので、できる限り腎臓病が進行してしまう前に治療を開始することが重要です。

タンパク尿

 腎臓に関連する体のむくみは「タンパク尿」が原因である可能性もあります。通常であれば尿中にタンパク質が出ることは少ないのですが、何らかの原因でタンパク質が尿中に多く含まれることがあります。

 尿中にタンパク質が含まれるということは、言い換えると血液中のタンパク質が減少するということになります。これを「低アルブミン血症(低タンパク血症)」と言います。アルブミン(血液中の主なタンパク質で、肝臓で合成される)には「水分を保持する」という性質があるので、血液中のタンパク質が減少すれば血液中の水分も保持できなくなってしまいます。これにより血管から不要な余分な水分がしみ出てしまい、むくみの原因になってしまうのです。

むくみの原因となる腎臓の病気

 腎臓の病気はいくつかありますが、その全てでむくみの症状が出るというわけではありません。腎臓の病気でむくみの症状が出るものは、主に「腎不全」「ネフローゼ症候群」が挙げられます。

腎不全

 腎臓の機能が健康な状態と比較して30%以上低下している状態を「腎不全」と言います。腎不全は、腎機能が急激に低下するタイプの「急性腎不全」と、数ヶ月から数年単位の長期間にわたって腎機能を低下させる要素が継続することで起こる「慢性腎不全」に分けられます。どちらの腎不全の場合でもむくみの症状が発生する可能性はあります。

 ただし、むくみがその症状として自覚できるタイミングには大きな違いがあります。急性腎不全の場合、比較的初期の段階からむくみの症状が現れます。一方で慢性腎不全の場合、徐々に症状が進行して腎臓の機能が低下するため、むくみの症状が現れるのは末期になってからというケースが少なくありません。

 急性腎不全の場合、腎臓の機能を回復させられる可能性があります。しかし慢性腎不全の場合、その機能を回復させることはほぼ不可能であるとされています。

ネフローゼ症候群

 腎臓の内部にある糸球体(毛細血管のかたまり)に炎症などの障害が発生することで発症するのが「ネフローゼ症候群」です。ネフローゼ症候群を発症すると、血液中のタンパク質が多量に尿の中に含まれてしまいます。健康な状態でも尿中には少量のタンパク質が含まれているものですが、ネフローゼ症候群を発症した場合は健康な状態と比較して20倍以上のタンパク質が含まれる状態になるのです。

 血液中のタンパク質が尿によって体外に排泄されてしまうため、血液中のタンパク質の量は減少してしまいます。これにより低アルブミン血症を引き起こし、浸透圧による血管内の保水機能が損なわれて血液中の水分が外にしみ出てしまいます。

 ネフローゼ症候群を発症したことによるむくみの症状の出方には、ある特徴があります。それは、ネフローゼ症候群を発症する原因や患者さんの状態によって、むくみの出方にも変化があるということです。急性腎不全のように初期の段階からむくみが現れることもあれば、慢性腎不全のように徐々にむくんでくるケースもあります。

一次性ネフローゼ症候群

 腎臓の機能低下や異常を引き起こしている原因が特定できないケースを「一次性ネフローゼ症候群」と言います。一次性ネフローゼ症候群は、主に以下のように分類されます。

  • 微小変化型ネフローゼ症候群
  • 巣状分節性糸球体硬化症
  • 膜性腎症
  • 膜性増殖性糸球体腎炎
  • 半月体形成性糸球体腎炎
  • メサンギウム増殖性糸球体腎炎

二次性ネフローゼ症候群

 腎臓に異常をもたらしている原因疾患が特定できるケースを「二次性ネフローゼ症候群」と言います。二次性ネフローゼ症候群の主な原因疾患は以下の通りです。

  • 糖尿病性腎症
  • 膠原病
  • 慢性肝炎
  • 悪性腫瘍
  • 腎硬化症

特発性浮腫

 これは腎臓の病気ではありませんが、念の為説明しておきます。特発性浮腫とは、病院で検査してもむくみの原因疾患が特定できない場合です。むくみが確認されて、腎臓だけでなく心臓や肝臓なども検査して明らかな異常が見つからなかった場合に診断される病名です。

 女性に多く見られるという特徴が知られています。また、ストレスが増加すると浮腫の症状も悪化する傾向があることや、生理周期が関わっている可能性が高いということもわかっています。ダイエットが原因となっているケースも考えられます。

腎臓の機能低下によるむくみの特徴

 むくみの原因はさまざまな理由が考えられます。むくみを自覚した際に腎臓の病気や機能低下を原因としているかどうかを判断する材料として、むくみの特徴を把握しておくことが有効です。

むくみが左右対称である

 腎機能の低下によって起こるむくみの場合、基本的に左右対称でむくんできます。むくみの原因の中には、下肢静脈瘤や血栓症のように特定の箇所にだけ原因が生じ、足であれば左足だけむくんでくるというケースもあります。

 しかし腎臓を原因としている場合は、左右どちらか一方だけではなく、右足がむくんだら左足もむくんでいるというように左右ともにむくみの症状が現れます。足のむくみを自覚した場合、それが両足なのか片足なのかをチェックしておきましょう。

慢性的なむくみ

 腎臓の機能が低下することによるむくみは、慢性的にその症状が継続します。むくみの原因が長時間の姿勢や運動不足、ダイエットなどの生活習慣によるものの場合、むくみは一過性のものとなります。

 しかし腎臓や心臓、リンパ節などにむくみの原因がある場合、むくみの症状は何日も継続します。生活習慣の改善でむくみの症状が改善された場合は、血管障害のように腎臓などが原因ではない可能性が高いです。

押すと凹みが残る

 むくみの場合、むくんでいる場所を指で押してみると凹みます。むくんでいる場所を10秒間指で押してみて、凹んだ場合はむくみであると判断できます(肥満によるものである場合、指で押しても凹むことはありません)。手軽な方法なので「むくみかな?」と思ったら、まずは指で押してみてください。

最初はくるぶし付近でむくむ

 腎臓の機能低下によるむくみの場合、最初は足のくるぶし付近でむくみが発生します。ただし、症状が進行するとむくみの症状は全身に及ぶようになります。個人差がありますが、5kg以上の体重増加があると、むくみが全身に広がることが多いです。

体重が増加する

 むくみは、要するに不要な水分が皮膚の下の細胞と細胞の間に溜まってしまう状態です。水分があるということは、それだけ重さが発生するということになります。腎機能が低下するほどにむくみの症状も広がっていきます。むくみが広がるということは、それだけ蓄積する水分や老廃物の量も多くなり、それに伴って体重が増加していきます。

重度のむくみ

 腎臓に原因があるむくみの場合、原因疾患である腎臓病や腎機能の低下を改善しなければむくみの症状は徐々に悪化します。重度のむくみにまで進行してしまった場合、内臓にまでむくみの症状が及ぶ可能性があります。

 結果、心臓への負担が増加します。また、お腹や胸に水が溜まってしまうと呼吸困難を引き起こす可能性があります。場合によっては、それらの症状によって命に関わるケースに発展する可能性も否定できません。

むくみを自覚した場合は何科を受診するべきか?

 腎臓の機能低下を原因としたむくみを自覚した場合、受診すべきなのは可能であれば「総合病院」がおすすめです。お住まいの近隣に総合病院が無いなど受診が難しい場合であれば「内科」を受診してください。

 むくみは、さまざまな原因によって発生します。腎臓の異常を原因とする場合もあれば、心臓や肝臓にリンパ節、生活習慣を原因とする一過性の場合もあります。病気の治療は、まず「病気の原因が何であるか?」を調べることが必要です。むくみの場合も、どの臓器に異常があるのか、それとも生活習慣の中に原因があるのかを知らないと、治療の進めることが難しいです。そのため、むくみの原因が何であっても基本的に対応可能な総合病院がおすすめなのです。

むくみの原因は腎臓だけではないけれど・・・

 今回、「腎臓のせいでむくんでいるかも・・・」という内容をまとめていますが、むくみの原因が常に腎臓の機能低下であるという意味ではありません。あくまでもむくみの原因の一つに、腎臓の機能低下が可能性としてあり得るという立ち位置であるということを理解しておいてください。

 とはいえ、前述した「腎臓の機能低下によるむくみの特徴」については、十分に注意しておく必要があります。該当する項目が多く、腎臓の機能低下による症状が他にも発生しているのであれば、腎臓の機能が低下している可能性は高くなります。手遅れになってしまえば、人工透析を受けなければならない生活が待っているかもしれないのです。特に慢性腎不全は回復の見込みが薄いため、早めに対処しなければなりません。

 腎臓は、悪くなっても自覚症状がなかなか出ないという特徴もあります。腎臓によるむくみの症状が出ている場合、既に腎臓の機能低下がそれなりに進んでいるケースも少なくありません。もし「ちょっとむくんでいるかも?」と気がついたり、体の不調を感じ取ったら早めに医療機関で診てもらいましょう。腎臓の機能低下を早めに発見できる良い機会になる可能性があります。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

SNSでもご購読できます。