検査

腎臓の機能低下を予防するには?検査で早期発見を!

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慢性腎臓病(CKD: Chronic Kidney Disease)とは、慢性に経過する腎臓病のことをいいます。患者数は、約1,330万人いるとされており、成人の国民8人に1人はCKDの患者さんで“新たな国民病”と言われています。

糖尿病や高血圧、メタボリックシンドローム(生活習慣病)、肥満、喫煙、腎臓病の家族歴などがある人はCKDになりやすいと言われおり、誰でもかかる可能性のある病気です。
腎臓は、沈黙の臓器といわれています。腎臓の機能が悪化してもなかなか自覚症状を感じず、腎臓の機能がかなり悪化してから気づくという方も多くいらっしゃいます。

腎臓が悪くなったら治らないの?

腎臓は、ある程度まで機能が悪化してしまうと腎臓がもとに戻るということはありません。放置しているとどんどんと悪化していき、人工透析をしないといけなくなることもあります。腎臓の機能が低下してしまった場合、進行を遅らせる治療を行うことが大切です。

慢性腎臓病の治療を行う為に重要なことは?

慢性腎臓病(CKD)は、早期発見し、早期に治療を開始し、腎臓の機能を低下させないことがとても大切です。病気の進行度合いや症状に応じた治療を行うためには、定期検査がとても重要です。

今回は、腎臓の機能低下の進行度合いを確認するのに必要な血液検査についてお話していきたいと思います。

血液検査

尿検査で腎疾患の可能性が高い場合は、血液検査を行います。はじめから何らかの腎疾患が疑われる場合は、尿検査と同時に行い進行度合いの確認をおこないます。

末梢血検査

白血球WBC(基準値:3,000~8,000/㎜³)

急性腎盂腎炎などの細菌の感染症に罹っていると増加します。また、全身エリテマトーデスでは低下します。とくに病気がなくても、ヘビースモーカーでは、10,000/㎜³以上に増加することがしばしばあります。

赤血球 RBC(基準値:380万~500万/㎜³)、血色素 Hb(ヘモグロビン,基準値:12~15g/㎗)、ヘマトクリットHt(基準値:35~50%)

貧血の程度を調べる検査です。進行した慢性腎不全の患者さんでは、腎臓で作られる造血ホルモン(エリスロポエチン)の産生が低下するため、3つの検査値がすべて低下します。

血小板 Plt(基準値:14万~40万/㎜³)

全身エリテマトーデスなどの膠原病の一部では減少します。ネフローゼ症候群や細菌感染症では増加します。

生化学検査

血清クレアチニン Cr(基準値:男性0.7~1.3㎎/dl 女性0.5~1.0㎎/dl)

腎臓の濾過能力が正常の50%以下に低下すると増加します。しかし、もともとは筋肉に由来する物質なので、濾過の能力に異常がない人でも筋肉量が多い人では、基準値よりやや高い値を示すこともあります。また、濾過能力の異常がある人でも腎臓の筋肉量が少ない女性や高齢者では正常範囲にとどまることもあります。
血清クレアチニンから糸球体濾過量GFR(基準値:90~120㎖/分)が推測できます。
患者さんの状態によって異なりますが、8.0㎎/dlとなると透析導入が検討されます。

 

血清尿素窒素 BUN(基準値:5~20㎎/㎗)

クレアチニンと同様に腎臓の濾過能力の指標となります。腎臓の働きが低下すると増加しますが、食事(タンパク質の摂取量)の影響をうける検査で、食後に検査すると異常値を示す場合があります。また、身体に水分が不足している(脱水症)ときや、発熱、甲状腺機能亢進症、悪性腫瘍、胃潰瘍で起こる消化管出血などが原因で増加することもあります。
また、タンパク質の摂取不足や肝不全では数値が低くなります。腎機能以外の影響も受けやすいため、腎機能の指標としては血清クレアチニンの方が信頼性が高いと考えられています。

 

尿酸 UA(基準値:2.4~7.0㎎/㎗)

食事によるプリン体の摂取過剰や時に家族性にみられる尿酸の排泄障害により、血液濃度が8.5~9㎎/㎗以上を超えた状態が続くと、痛風という急性の関節炎を起こしやすくなるといわれています。濾過能力が低下した腎不全の患者さんでは、さらに血液の濃度は増加しやすくなります。

 

血清総たんぱくTP(基準値:6.7~8.0㎎/㎗)、血清アルブミン Alb(基準値:3.6~5.0g/㎗)

ネフローゼ症候群では、尿たんぱくが多量にもれるため血液のたんぱく濃度の低下がみられます。とくにアルブミンというたんぱくの漏れが多いため、低アルブミン血症がみられ、むくみの原因になります。そのほか、栄養失調や肝硬変症でも総たんぱく、アルブミン濃度は低くなります。

 

血清総コレステロール TC(基準値:130~220㎎/㎗)
中性脂肪(基準値:30~150㎎/㎗)
ネフローゼ症候群では総コレステロールや中性脂肪が増加し、高脂血症(脂質異常症)を呈します。

電解質

血清ナトリウムNa(基準値:134~143mEq/l)、血清クロールCl(基準値:99~107mEq/l)

ヒトの身体の60%は水で、その2/3は細胞の中にあり(細胞内液)、残りの1/3は血管を含む細胞の外にあるため、細胞外液と呼ばれています。血清ナトリウムイオン(Na+)は、クロールイオン(Cl-)とともに0.9%食塩水(生理食塩水)という形で細胞外液に存在し、細胞外液の量を決定する重要な役目をしています。
腎機能が正常であれば、食塩(NaCl)の量が少なくても多すぎても、腎臓でNa+の排泄を増やしたり減らしたりして、血清Na+を一定に保つことで細胞外液量を調節することができます。しかし、腎不全ではNa+調節範囲が極端に狭くなり、食塩を摂りすぎるとNa+が蓄積することで細胞外液量が増加し、むくみとなります。少なすぎると細胞外液量が減少し、脱水症となります。
このように血清Na+値やCl-値は、むくみや脱水症状などの体液バランス異常の重要な指標となりますが、その値は水分量との相対により決定されているので、体内Na+やCl-の総量とは必ずしも一致しないことがあります。

 

血清カリウム K(基準値:3.2~4.5mEq/l)

カリウムは、野菜や果物に多量に含まれています。腎機能低下が進むとカリウムを腎臓から排泄する能力が低下するので、野菜や果物などのカリウムを豊富に含んだ食品を摂りすぎると血清カリウム値が増加(高カリウム血症)しやすくなります。血清カリウム値が6.5mEq/Lを超えると手や足のしびれや筋力の低下、さらに進行すると危険な不整脈が起こることがあります。アンジオテンシン変換阻害酵素薬(カプトリル・タナトリル)やアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ロサルタン・バルサルタン)も高カリウム血症の原因として注意が必要です。逆に長期にわたって利尿剤を使用していると、低カリウム血症になることがあります。

 

血清カルシウム血症 Ca(基準値:8~9㎎/㎗)

腎機能低下が進むと血液のカルシウム値が低下(低カルシウム血症)し、筋肉がつるなどの症状が出る場合があります。副甲状腺ホルモンが過剰に作られる病気や癌の骨転移などでは、高カルシウム血症になる場合があります。この場合、尿細管が多量のカルシウムで詰まるため、急性腎不全を起こすことがあります。

 

血清リン P(基準値:2.5~4.3㎎/㎗)

腎機能低下が進むと血液のリンは増加(高リン血症)します。ある種の尿細管疾患や制酸剤の長期内服により、血液のリンは低下(低リン血症)することがあり、ひどくなると食欲不振や筋力の低下を起こすことがあります。

腎不全では、血清リンが増えることで血清カルシウムが減少していきます。
血液の中でカルシウム3つに対してリン2つの組み合わせて結合し、血管壁などの組織に沈着し石灰化を起こします。腎不全では血清のリンが増える一方なので血清カルシウムがどんどん消費されていくため減少していくのです。

腎機能低下が進行すると、血清クレアチニン、尿素窒素、尿酸が上昇します。

 

腎機能の評価

古くから「血清クレアチニン値(Cr)」が腎機能の指標とされていました(血清クレアチニンは筋肉量に関係するので、男性と女性では正常値が異なります)。
最近では、血清クレアチニン値を測定し、性別の年齢に伴う数値を計算式に当てはめる「推算糸球体濾過量(eGFR)」という指標を用いるようになりました。

推算糸球体濾過量(eGFR)とは?

eGFRは、腎臓にどれぐらい排泄物を尿へ排泄する機能があるかを示しています。この値が低いと腎臓の働きが悪くなっているということになります。腎臓の不調を早期に発見するためにeGFRを調べることは重要です。
eGFRは血清クレアチニン値と年齢、性別から計算することができます。今では、血清クレアチニンの値が分かればインターネットで簡単にeGFRを計算してくれるサイトがあるので自分のeGFRを是非計算してみてください。

推算糸球体濾過量(eGFR)の基準値

  • 90以上:正常または高値(Grade1)
  • 89~60:正常または軽度の腎機能低下(Grade2)
  • 59~45:軽度~中等度の腎機能低下(Grade3a)
  • 44~30:中等度~高度の腎機能低下(Grade3b)
  • 29~15:高度の腎機能の低下(Grade4)
  • 14以下:末期腎不全(Grade5)

慢性腎臓病(CKD: chronic kidney disease)の定義

①尿蛋白がでている等の腎障害の存在が明らかである。
②GER(糸球体濾過量)60未満
①、②のいずれか、または両方が3ヵ月以上持続する。

CKDの治療はいつから開始するの?

Grade1であっても蛋白尿2+以上の場合、血尿と蛋白尿がともに陽性の場合にはCKDが疑われるので腎臓専門医への受診が必要な場合があります。
蛋白尿などの腎障害がない場合でも、高血圧・糖尿病・メタボリックシンドローム(生活習慣病)・肥満・喫煙・腎臓病の家族歴のある方はCKDになりやすいです。高血圧・糖尿病などはしっかりと治療しコントロールすることが大切です。また、メタボリックシンドロームや肥満、喫煙であてはまる方は生活習慣の改善に努めることをおすすめします。

Grade3a以降は、それぞれのステージにあったCKDの治療が必要です。腎臓専門医への受診を行い適切な治療を早期から開始することがとても重要です。

なかなか健康診断を受けられていない方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?腎臓の機能の低下を早期発見し、早期に治療を開始するためにも定期的な健診を受けましょう!

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