透析原因・

心臓突然死!透析患者さんは、高頻度で発症!?気を付けたい不整脈とは?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

 透析治療を受ける人は、さまざまな合併症のリスクと向き合っていく必要があります。しかし、「突然死」のリスクが有ると聞けば、怖くなってしまうのではないでしょうか。そのリスクの一つが「不整脈」です。

 透析患者さんのみが不整脈になってしまうというわけではありませんが、リスクがあるとなれば無視できない内容です。なぜ不整脈になってしまうのか、どういった対処法があるのかを知れば、向き合っていくことも難しくはないでしょう。

 なぜ透析患者さんが高頻度で心臓突然死を起こしてしまうのか、不整脈についての知識とともに説明していきます。

不整脈とは?

 不整脈とは、心拍が不規則になったり、心拍数が早いまたは遅くなるといった状態になる病気です。こうした症状は正常な場合でも発生するものであり、例えば激しい運動によって一時的に心拍数が上昇するといったことは日常的に起こり得ます。しかし問題がある不整脈の場合もあります。

 わかりやすい言葉で言えば「怖い不整脈」という言い方があります。例えば「急に意識がなくなる」「息切れと脈拍減少」といった症状が見られる場合、心臓が止まっている、または心不全を患っているというケースが考えられます。このように命にかかわるような不整脈を「致死性不整脈」と言い、早めに医療機関で対処しないと危険です。

致死性不整脈とは?

 不整脈のうち、短時間で死亡する危険性が高いものを言います。突然死のリスクが高く、早期の治療が必要になる不整脈です。心原性の心肺機能停止は年間で7万人以上、1日あたり約200人が心臓突然死で亡くなっている計算になります。その原因の大半が、致死性不整脈なのです。

不整脈の症状

  • 脈がゆっくりになる(徐脈:脈が1分間に50以下)
  • 脈が早くなる(頻脈:脈が1分間に100以上)
  • 脈が不規則になる
  • 息切れ
  • 気が遠くなる
  • 動悸
  • 息苦しさ
  • めまい、失神
  • 胸部の不快感

不整脈の種類

期外収縮

  • 心房性期外収縮
  • 心室性期外収縮

頻脈

  • 心房頻拍
  • 心房細動
  • 心室頻拍
  • 心室細動
  • 発作性上室性頻拍症
  • WPW(ウォルフパーキングホワイト)症候群

徐脈

  • 洞不全症候群
  • 房室ブロック

ただし、全く症状が出ずに経過する患者さんも少なくありません

透析患者さんの不整脈の原因

透析治療による不整脈

 透析治療では、腎臓の機能低下によって必要になる除水や不要な物質の除去を行います。この時、水分やカリウムなどが急激に変化することで循環器系に大きな負担がかかり、不整脈の原因となります。また、透析治療によって体液量が急激に減少することによる交感神経の持続的賦活も不整脈の原因となります。

基礎疾患による不整脈

 透析患者さんは、虚血性心疾患や慢性うっ血性心不全といった病気を合併しているケースが多く見られます。これらの基礎疾患を原因として不整脈を発症してしまいます。

透析患者さんの心臓突然死のリスク

 日本透析医学会(JSDT)の統計調査によると、血液透析患者さんにおける心臓突然死は約5%であると言われています。また、米国腎臓データベース(USRDS)による調査では約26%とされています。健康な人と比較して、心臓突然死の発症リスクは25倍~130倍であるということされています。

透析患者さんの心臓突然死のリスクは、透析治療開始後12時間以内および2日あけた透析治療開始前12時間以内がピークであるとされています。

透析治療開始後の心臓突然死の原因

 透析治療開始後12時間以内に心臓突然死の発症が多い理由は、透析治療において低カリウム血症を起こすことと、交感神経系が活発になることが原因であるとされています。

透析治療前の心臓突然死の原因

 2日あけた後の透析治療前12時間以内に心臓突然死が多い理由は、透析前ゆえに循環している血液量が多いことと、高カリウム血症が原因であるとされています。

不整脈の治療方法

ペースメーカー治療

 ペースメーカーを体内に埋め込む手術を行います。

植込み型除細動器治療

 植込み型除細動器(ICD)を体内に埋め込む手術を行います。

カテーテルアブレーション治療

 心臓内の異常な電気刺激回路を焼き切る治療を行います。

薬物療法

 抗不整脈薬によって治療を行います。

透析患者さんに起きやすい心血管疾患とは?

 透析患者さんの死亡原因について、腎臓を悪くされているため腎臓病が悪化して亡くなってしまうと思っている人が少なくありません。しかし、腎臓が悪くて人工透析を受けている患者さんの死亡原因の第一位は「心血管疾患」なのです。心血管疾患とは、心臓や血管などの循環器の病気のことです。

日本透析医学会の統計調査によると、2014年度の透析患者さんの死亡原因で第一位だったのは「心不全」で、全体の約26%に相当しています。これに同じく心血管疾患である「脳血管障害」と「心筋梗塞」を加えると全体の約38%に相当し、言い換えれば亡くなった透析患者さんの3人に1人は心血管疾患で亡くなっているという計算になります。

心疾患への有効な対策は?

 不整脈など、心疾患を放置すれば死亡リスクを大幅に上げることに繋がります。基本的な対処法は担当医の指示に従ってもらいますが、以下のポイントについても注意してください。

血圧をコントロールする

 透析患者さんは、血圧のコントロールが重要なポイントになります。透析治療は血液中の水分量を急激に変化させ、高血圧や低血圧の原因となります。水分や塩分、カリウムの摂取制限を行い、体重を適正な数値でコントロールすることが重要です。

カリウムなどミネラルをコントロールする

 カリウムなどのミネラル摂取をコントロールすることも、不整脈などの心疾患の対策として有効です。特にリンやカルシウムなどの栄養は血管の石灰化を招いてしまいますので、カリウムと同様に食事療法によって摂取量をコントロールしてください。

貧血を改善する

 貧血の改善も心疾患の対策として有効な手段の一つです。多くの透析患者さんは、透析の導入前から貧血が進行しています。そのため透析を受けられる早い段階で貧血への対処が必要になります。

脂質異常症を改善する

 脂質異常症を改善します。食事療法と運動療法を中心として、血中の悪玉コレステロールと中性脂肪の管理を行います。食事療法では低栄養にならないように注意が必要です。

不整脈の検査

 「血液透析患者における心血管合併症の評価と治療に関するガイドライン」によると、透析患者さんの不整脈の検査では、心臓突然死に関連するさまざまな先天性の異常を確認します。それだけでなく、電解質異常や寝室ブロックなどの基礎疾患の有無を確認できる標準安静時12誘導心電図の検査が、透析治療導入時および開始後定期的に実施されることが望ましいとされています。

 不整脈のリスクを評価するためにはホルター心電図の利用が推奨されています。また、不整脈の誘発および診断の確定においては運動負荷心電図が望ましいとされています。その他にも心エコー検査や心臓核医学検査の施工も推奨されており、検査において冠動脈疾患を強く疑う場合には冠動脈造影検査の利用が推奨されています。

透析患者さんは不整脈に要注意

 透析治療を受けられている患者さんは、不整脈による死亡リスクの上昇を理解しなければなりません。心血管疾患による死亡率が、透析患者さんの死亡要因の3分の1を占めるとなれば、決して無視できるものではありません。

 不整脈によるリスクを高めないためにも、早めに対処することが重要です。そのためには自己管理が重要であり、不整脈の症状が現れていないことを日頃から確認しておきましょう。何か不安な症状を放置すれば、それが精神的なストレスとなって体調の悪化を招いてしまいますので、早めに担当医に相談してください。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

SNSでもご購読できます。