透析原因・

腎臓病が進行していくと腎不全になる!?その病気の種類とは??

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 腎臓の病気を放置してしまうと、徐々に腎機能が低下してしまいます。最終的に命に関わるほどに腎機能が低下してしまうと、人工透析または腎移植を必要とする事態に陥ってしまいます。

 腎機能が低下して、腎臓が正常に機能していない状態のことを「腎不全」と言います。特に原因となる疾患があり、徐々に腎不全になる場合は「慢性腎不全」となり、透析か腎移植をしないと回復の見込みはありません。

 人工透析や腎移植をしなければならない事態に陥らないために、慢性腎不全の原因となるような腎臓の病気について説明します。

慢性腎不全と急性腎不全

 冒頭でも触れていますが、腎不全には「慢性腎不全」と「急性腎不全」の2種類があります。どちらも腎機能が低下しているという状態は同じなのですが、それに至る経緯が大きく異なります。

慢性腎不全とその原因

 慢性腎不全は、数ヶ月~数年の時間をかけて進行する腎臓病により腎機能が低下する状態のことを言います。腎臓病に属するすべての病気が慢性腎不全の原因疾患となります。

急性腎不全とその原因

 急性腎不全は、何らかの原因により腎機能が急激に低下し、数時間~数週間程度で腎不全の状態になります。それにより、高クレアチニン血症や高窒素血症などを引き起こし、身体の内部の環境を維持できなくなってしまいます。急性腎不全には。尿量の減少を伴うタイプ(乏尿性)と伴わないタイプ(非乏尿性)が存在します。

 急性腎不全の原因は、大きく分けて「腎性」「腎前性」「腎後性」の3つのタイプに分けることができます。

腎性の急性腎不全

 腎性の急性腎不全は、腎臓そのものが障害されたことにより腎不全の症状が起こるタイプです。障害を受けるのは「腎血管(血管炎や悪性高血圧など)」「糸球体(膠原病や急速進行性腎炎症候群など)」「間質(薬剤による副作用や高カルシウム血症など)」「尿細管閉塞(尿酸、シュウ酸、多発性骨髄腫など)」です。

腎前性の急性腎不全

 腎前性の急性腎不全は、腎臓そのものには障害が起こっておらず、循環血流量が減少することで起こるタイプです。血流量が減少するということは尿量が少なくなるということであり、出血や下痢による循環血漿量の減少などを原因としています。

腎後性の急性腎不全

 腎後性の急性腎不全は、尿を排泄するための経路に閉塞が発生したことによって起こるタイプです。閉塞が起こるのは「腎盂尿管」「膀胱」「尿道」であり、主に泌尿器科の病気や腫瘍の転移を原因としています。

慢性腎不全の原因となる主な腎臓病

糖尿病性腎症

 糖尿病性腎症とは、糖尿病の主な合併症の一つです。糖尿病によって糸球体に障害が発生し、腎機能が低下してしまいます。透析治療を受けている患者さんの、透析を受ける原因となった病気で最も多かったのがこの疾患です。

糖尿病性腎症の原因

 糖尿病性腎症の原因は、糖尿病による「高血糖」と「高血圧」が基本的な原因となります。糖尿病を放置すると血糖値と血圧の高さにより小さな血管に障害が引き起こされます。腎臓の糸球体も細小血管の集合体であり、障害を受けることで腎臓の機能が低下する原因となります。

糖尿病性腎症の治療

 糖尿病性腎症の治療の基本は「血糖のコントロール」と「血圧のコントロール」です。糖尿病性腎症の治療内容は、糖尿病性腎症の病期によって異なります。

 第1期(腎症前期)の頃は血糖のコントロールを行います。第2期(早期腎症)になると血糖コントロールが厳格になり、降圧治療が開始されます。第3期(顕性腎症)になると降圧治療も厳格化され、タンパク質や水分の摂取制限が開始されます。第4期(腎不全期)になると、透析療法が導入されます。

慢性糸球体腎炎

 慢性糸球体腎炎とは、糸球体の炎症により血尿やタンパク尿が出る病気を総称した呼び方です。血尿やタンパク尿が少なくとも1年以上継続するものをいい、腎臓病の中で最も多いものでもあります。

慢性糸球体腎炎の原因

 慢性糸球体腎炎を発症する詳しい原因については未だ解明されていません。現状では、免疫複合体が腎臓の糸球体に沈着することによる、免疫学的な仕組みによって引き起こされることが多いということがわかっています。

慢性糸球体腎炎の治療

 慢性糸球体腎炎の治療の基本となるのは「薬物療法」と「食事療法」です。

慢性糸球体腎炎の治療に用いられる薬は、主に抗血小板薬や抗凝固薬、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬や副腎皮質ステロイド薬です。また、浮腫が見られる場合には利尿剤を使用して余分な水分の排出を促します。

 食事制限は患者さんの腎炎の活動性や腎機能の程度、合併症の有無などにより内容が異なります。原則として、血圧が正常であっても塩分制限を行います。タンパク質の制限も行われる一方で、それにより不足するエネルギーは十分に確保することも重要です。浮腫を伴う場合、水分の制限も行います。

腎硬化症

 腎硬化症とは、長年の高血圧によって腎臓の細小動脈に障害が発生し、腎機能を低下させてしまう病気のことです。多くの場合は徐々に腎機能を低下させる良性腎硬化症なのですが、中には急激に腎機能を低下させてしまう悪性高血圧に合併する悪性腎硬化症のケースもあります。

腎硬化症の原因

 良性腎硬化症の場合、生活習慣や遺伝に関係する「本態性高血圧」により、長い年月を経て腎臓の動脈硬化を引き起こすことが原因であることが多いです。一方で悪性腎硬化症の場合、本態性高血圧の他に「褐色細胞腫」「腎血管性高血圧」などの二次性高血圧の経過中に血圧が急激に上昇することで発症します。悪性腎硬化症は、脳血管障害や心不全を呈することがあります。

腎硬化症の治療

 腎硬化症の治療は、原因となっている高血圧を治療することが中心となります。減塩を中心とした食事療法と運動療法により、血圧のコントロールを実施します。血圧が下がらない場合には、薬物療法を併用します。

 悪性腎硬化症の場合、血圧だけでなく全身管理が必要になります。多くの場合は入院を必要とします。

多発性嚢胞腎

 多発性嚢胞腎とは、腎臓に多発性の嚢胞(液体が詰まった袋状の物体)が発生する病気です。先天性の腎実感であり、多くの場合は腎不全に至ります。「常染色体劣性多発性嚢胞腎」と「常染色体優性多発性嚢胞腎」に分類されます。

多発性嚢胞腎の原因

 多発性嚢胞腎の原因は遺伝子にあります。常染色体劣性多発性嚢胞腎の原因遺伝子は1種類で、PKHD1と呼ばれています。常染色体優性多発性嚢胞腎の原因遺伝子は2種類で、常染色体優性多発性嚢胞腎患者さんの85%がPKD1、15%がPKD2という遺伝子を原因としています。

多発性嚢胞腎の治療

 多発性嚢胞腎には、根本的な治療法は確立していません。進行性の腎不全に対して、薬物療法による血圧の管理を行います。また、嚢胞内出血や嚢胞内感染が発生した場合には、安静にした上で抗生剤および止血薬を投与します。

 血尿が確認された場合、悪性腫瘍が否定できれば保存的に対処しますが、上部尿路感染症に対しては速やかな治療が必要になります。また、透析患者さんの腹部膨満感の緩和方法として、両側腎動脈塞栓術が良好であるとされています。

腎臓もまた「沈黙の臓器」、腎不全に至らないように早めの対処を

 腎臓は、肝臓と並んで「沈黙の臓器」の一つに数えられています。緩やかに症状が進行する慢性腎臓病はなかなか自覚症状に気がつくことができず、気がついた時にはかなり進行しているということも珍しくありません。

 慢性腎臓病の行き着く先は慢性腎不全と、それに伴う透析療法です。そうならないためには、定期的に検査を受けて腎臓の異常を早めに知ることが重要です。

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