日頃の食生活次第では、病気に強い体を作ることができるケースもあり、一方で何らかの病気を発症しやすくなるケースもあります。特に偏った食生活を続けていると内蔵や血管に負担がかかり、知らず知らずのうちに病気が進行しているということも珍しくありません。
腎臓を悪くしている人は、そのままでは腎不全まで進行して透析療法を導入しなければならなくなる可能性も考えなければなりません。そして、これ以上腎臓の状態が悪くならないように、日頃の食事にも気を配る必要があります。
そこで、医師から「腎臓が悪い」と言われた人が食事について注意すべき点について説明します。
コンテンツ
タンパク質が多い食事を避ける
腎臓が悪いと言われたら、「タンパク質」の摂取に注意しなければなりません。
タンパク質が多い食材
食品名 |
含有量/1回あたり使用量目安 |
牛もも肉 |
10.6g/1枚50g |
豚ヒレ肉 |
11.4g/1枚50g |
鶏ささみ |
9.2g/1本40g |
アジ(生・可食部のみ) |
14.5g/1尾70g |
鮭(生・切り身) |
180.g/切り身80g |
本マグロの赤身 |
18.5g/刺し身70g |
パルメザンチーズ |
2.64g/6g |
プロセスチーズ |
4.5g/20g |
納豆 |
8.2g/1パック50g |
卵 |
7.4g/1個 |
総じて魚類と肉類にタンパク質が多く含まれています。自炊時には使用量に注意し、外食時には使用メニューを避けるか、完食せず残すといった方法でタンパク質の過剰摂取を避けてください。
とりすぎ注意、とらなすぎにも注意
タンパク質制限の厄介なところは、とりすぎには注意しなければなりませんが、とらなすぎにも注意しなければならないというポイントです。タンパク質は体を作るために重要な栄養であり、エネルギー源にもなります。しかし、タンパク質のとりすぎは腎臓への負担が問題となりますので、腎臓病のステージに応じた適度な摂取量を心がけるようにしてください。
タンパク質の制限は、慢性腎臓病(CKD)の進行度合いによって適切な摂取量が異なります。基本的に以下の摂取量を心がけるようにしてください。
ステージ |
GRF |
タンパク質(g/標準体重kg/日) |
ステージ1 |
≧90 |
過剰な摂取をしない |
ステージ2 |
60~89 |
|
ステージ3a |
45~59 |
0.8~1.0 |
ステージ3b |
30~44 |
0.6~0.8 |
ステージ4 |
15~29 |
|
ステージ5 |
<15 |
エネルギーを十分に摂取する
タンパク質を制限するため、自然に摂取エネルギー量が控えめになってしまいます。しかしエネルギーが不足すると体内のタンパク質が分解されてエネルギー源となり、尿素窒素が増える=タンパク質を多く摂取することと同じことになります。タンパク質の制限を有効にするため、エネルギーは十分に摂取する必要があります。
エネルギーの摂取量
エネルギーの摂取量は、1日で標準体重1kgあたり25~35kcalです。例えば標準体重が60kgの場合、1日で摂取するエネルギー量は1,500~2,100kcalです。
上手なエネルギー摂取方法
エネルギー源の一つであるタンパク質を制限されているので、それ以外のエネルギー源から上手にエネルギーを摂取する必要があります。
砂糖・でんぷんを活用する
エネルギー源となる「砂糖」「でんぷん」は、タンパク質が含まれていませんので、タンパク質を避けつつエネルギーを確保するのに役立ちます。ただし、「糖尿病」の疑いがある人や糖尿病と診断されている人は糖質の摂取制限も必要になります。
「お菓子」の形で摂取するのも悪くないのですが、お菓子の中にはタンパク質を含む「牛乳」「卵」「穀類」「小麦」などが使われている可能性があります。手作りの場合はこれらの使用を避け、既成品を購入する場合はこれらが少ないものを選んでください。
油脂類を活用する
「油脂類」はタンパク質を含まず、少量で高いエネルギー量を持つ食材です。とりすぎは注意が必要ですが、揚げ物や炒めものなどの形で効果的に油脂類を摂取し、効率の良いエネルギー源としましょう。
塩分が多い食事を避ける
腎臓が悪いと言われたら「塩分」のとりすぎに注意しなければなりません。
塩分が多い食材
食品名 |
含有量/1回あたり使用量目安 |
梅干し |
0.8~2.0g/1個10g |
ザーサイ |
13.7g/1瓶100g |
紅生姜 |
1.42g/20g |
カットわかめ(乾燥) |
0.24g/小さじ1杯1g |
塩昆布 |
5.5g/1袋30g |
あおのり |
0.22g/大さじ1杯2.5g |
カップラーメン |
4.5g~7.0g/1パック |
固形コンソメ |
2.16g/1個5g |
しょうゆ |
2~3g/大さじ1杯18g |
みそ |
2.3g/大さじ1杯18g |
「しょうゆ」や「みそ」など、日本人が慣れ親しんでいる調味料に塩分が多く含まれているのがわかります。そこで、主な調味料の塩分量についてもまとめてみました。
食品名 |
含有量/1回あたり使用量目安 |
豆板醤 |
3.2g/大さじ1杯18g |
カレールー |
2.1g/一かけ20g |
オイスターソース |
2.0g/大さじ1杯18g |
ベーキングパウダー |
2.0g/大さじ1杯12g |
からし |
1.33g/大さじ1杯18g |
和風ドレッシング |
1.26g/大さじ1杯17g |
とんかつソース |
0.95g/大さじ1杯17g |
めんつゆ |
0.5g/大さじ1杯15g |
トマトケチャップ |
0.5g/大さじ1杯15g |
バター |
0.23g/12g |
マヨネーズ |
0.2g/大さじ1杯12g |
みりん |
0.2g/100ml |
こしょう |
0g |
お酢 |
0g |
オリーブ油・ごま油 |
0g |
無塩バター |
0g |
調味料によっては、少量でも相当量の塩分を摂取することになります。自炊では、塩分の少ない調味料を中心に味付けし、塩分の多い調味料は工夫して使うようにしてください。バターは他の調味料と比べると比較的塩分が少ないですが、無塩バターのほうが塩分制限が容易になります。
塩分の摂取量
腎臓が悪い人の塩分摂取量は、1日3.0g以上6.0g未満が適切だとされています。
外食に注意
腎臓が悪い人の塩分制限において重要なポイントになるのが「外食」です。外食において提供される料理には味の濃いものが多く、塩分量が多いことが危惧されます。外食において塩分摂取量を抑える方法としては以下のような方法があります。特に、外食の頻度が高い人は注意が必要です。
・漬物を残す
・スープやつゆを残す
・ソースは別添えにしてもらい、控えめにする
・(可能であれば)薄い味付けで注文する
カリウムが多い食事を避ける
腎機能がある程度低下すると、「カリウム」の多い食事を避けなければならなくなります。
カリウムが多い食材
食品名 |
含有量/1回あたり使用量目安 |
パセリ |
50mg/1枝5g |
ほうれん草 |
1860mg/1束270g |
カボチャ |
1180mg/Mサイズ1/4カット260g |
アボカド |
1000mg/1個140g |
バナナ |
320mg/1本90g |
干しぶどう |
740mg/100g |
豆みそ |
167mg/大さじ1杯18g |
納豆 |
330mg/1パック50g |
やまといも |
1770mg/1個300g |
ポテトチップス |
720mg/1袋60g |
カリウムは、野菜や果物類に多く含まれています。カリウムが制限されている場合、これらの食べ過ぎには十分注意しなければなりません。また、カリウムは水に流れやすい性質を持つので、「水さらし」や「下茹で」など工夫することで2/3~1/3に減らすことができます。
カリウムの摂取量
カリウムの摂取量は、CKDの進行度合いによって異なります。
ステージ |
GRF |
カリウム(mg/日) |
ステージ1 |
≧90 |
制限なし |
ステージ2 |
60~89 |
|
ステージ3a |
45~59 |
|
ステージ3b |
30~44 |
≦2000 |
ステージ4 |
15~29 |
≦1500 |
ステージ5 |
<15 |
その他に食事で注意しなければならないポイントは?
リンの摂取量に注意する
症状によっては「リン」の摂取制限が必要になります。リンは「しらす干し」「プロセスチーズ」「ベーキングパウダー」など加工食品の他にも、インスタント食品やファーストフードに多く含まれています。
水分の摂取量に注意する
症状によっては「水分」の摂取制限が必要になります。飲み物に注意することも必要ですが、料理にも水分が多く含まれている点には特に注意が必要です。煮物などの汁気を多く含む料理は控えるようにしましょう。ただし過剰な水分制限は体調悪化の原因になりますので、必要量は摂取することを心がけてください。
過度な飲酒に注意する
飲酒量が多いと血圧が上がり、腎臓への負担が大きくなります。全く飲むなとまでは言いませんが、節度ある飲酒を心がけて腎臓への負担を最小限に抑えてください。
食事の満足度を維持する
食事に過度な制限が課せられると、食事の満足度とともに生活の質が下がります。これでは長続きしませんので、味付けを工夫したりレパートリーを減らさない工夫をするなど、食事の満足度を維持して継続できるようにしましょう。
食事の満足度を維持して適切な制限を維持する
腎機能の改善には食事療法の継続が必要です。制限の内容・度合いは患者さんによって異なりますので、自分に必要な注意点をきちんと把握して工夫しながら、食事の楽しみも維持できるようにしましょう。続けることが大切です。