基礎知識

メタボリックシンドロームの人は腎臓の機能低下に注意!!

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 「メタボリックシンドローム」という言葉を聞いたことがある・見たことがあるという人は少なくないでしょう。肥満の代名詞として用いられていることが多く、多くの人が不健康の象徴の一つとして捉えています。

 確かにメタボリックシンドロームは健康に対して悪影響を及ぼしますが、実は腎臓にも悪影響を及ぼすことをご存知でしょうか。メタボリックシンドロームを指摘された人は、このままでは腎機能が低下して最終的に透析療法が必要になる可能性も考えられます。

 そこで、メタボリックシンドロームと腎臓の関係について説明します。

メタボリックシンドロームとは?

 「メタボリックシンドローム=肥満」というイメージを持っている人が多いですが、厳密には違います。メタボリックシンドロームとは、直訳すると「代謝症候群」といいます。

 具体的な意味合いとしては、「内臓脂肪型肥満」に、「高血糖」「高血圧」「脂質異常症」のうち2つ以上の症状が出ている状態の事を言います。この状態は、動脈硬化を急速に進行させる原因となります。

メタボリックシンドロームと腎臓の関係

 メタボリックシンドロームは、内臓脂肪型肥満と高血糖などが一緒の状態であることは説明しました。そして、それこそが腎臓に深く関わり、腎機能を低下させる大きな要因となるのです。

内臓脂肪型肥満と腎臓

 まず、メタボリックシンドロームであるということは、確実に「内臓脂肪型肥満である」ということでもあります。内臓脂肪型肥満であることは、糖尿病性腎症の指標でもあるアルブミン尿が出やすくなるということでもあります。

 また、肥満であることは後述の高血糖や高血圧などを合併している事が多いことも知られています。これらのリスクと腎臓の関係については後述しますが、内臓脂肪型肥満を放置することは腎臓にとって大きな弊害となるのです。

高血糖と腎臓

 高血糖の状態を放置すると「糖尿病」になります。糖尿病にはいくつかの合併症のリスクが伴いますが、その中の一つに「糖尿病性腎症」があります。糖尿病性腎症は糖尿病による血管へのダメージが腎臓の糸球体にも及び、腎機能を低下させてしまう病気です。

 糖尿病性腎症の怖いところは、その「透析に至るリスクの大きさ」も挙げられます。透析療法を開始した患者さんのうち、4割以上の患者さんが糖尿病性腎症によって透析療法を開始したというデータがあります。つまり高血糖を放置して糖尿病性腎症を発症するということは、透析療法に至る近道でもあるということなのです。

高血圧と腎臓

 高血圧を放置することは、腎不全に至る悪循環をスタートさせることになります。血圧が高い状態を放置すると、血管が傷つきます。腎臓は糸球体という細小血管の集合体であり、血圧が高いと糸球体にダメージが及びます。

 糸球体が傷つくことで、腎臓の濾過機能が低下してしまいます。濾過機能が低下することにより、余分な水分を取り除く能力も低下することになり、血液中の水分量が増加します。余分な水分により血流量が増加することにより血圧が上昇し、血管を傷つけてしまいます。この「血圧上昇→腎機能低下→血流量増加=血圧上昇」という悪循環が繰り返されることにより慢性的に腎機能が低下し続け、慢性腎不全に陥ってしまうのです。

脂質異常症と腎臓

 脂質異常症であることも、腎臓にとって悪影響となります。脂質異常症になると、動脈硬化が進行しやすくなってしまいます。これにより慢性腎臓病を発症しやすくなるのです。

 さらに、慢性腎臓病が脂質異常症を招くという側面もあります。腎機能が低下すると尿中にタンパク質が漏れ出てしまい、その不足分をアルブミンの生成により補います。この時、アルブミンと共に悪玉(LDL)コレステロールが生成されてしまいます。生成された悪玉コレステロールは血液中に移動しますので、血中コレステロール濃度が高くなって脂質異常症となるのです。

メタボリックシンドロームを予防するためには?

 このように、メタボリックシンドロームになると腎臓への悪影響が極めて大きく、最終的には末期の腎不全になって透析療法や腎移植を余儀なくされてしまいます。もちろん、メタボリックシンドロームだけが腎不全の原因になるというわけではありませんが、メタボリックシンドロームを予防することは腎不全の予防にも少なからず関わっているということは間違いありません。

食生活を見直す

 メタボリックシンドロームを予防・改善するということはつまり「内臓脂肪を減らす」ということです。言い換えれば「減量」が必要であり、そのために欠かせないのが食事内容を見直すことです。

 基本的な方針としては、「摂取エネルギー<消費エネルギー」の生活を続けることです。そのため、食事によって摂取するエネルギー量を減らすことが基本方針となります。とはいえ単純に食べる量を減らすのではなく、栄養バランスを損なうこと無く食事量を減らすことが重要なポイントです。炭水化物ばかり減らしてはエネルギー不足になりますので、全体的な食事量を減らす方針で食事を続けてください。

 また、メタボリックシンドロームになりやすい食習慣を改善することも重要です。例えば「朝食抜き」は止めて、朝昼夕3食きちんと食べるようにしてください。また、早食いは満腹感を感じにくくなりますので、よく噛んでゆっくり食事を楽しんでください。その他にも「腹7~8分目に留める」「就寝前3時間に飲食しない」「間食を減らす」といった点にも注意が必要です。

運動の習慣を持つ

 メタボリックシンドローム予防・改善のためには摂取エネルギーよりも消費エネルギーを増やすことが必要です。消費エネルギーに関与するものの一つが「運動」です。

 メタボリックシンドロームのための運動で最も重要なポイントは「継続させること」です。1日2日の運動でメタボリックシンドロームを予防・改善できるわけがありません。長く運動を継続することこそ必要なのであり、そのためには「無理をしない」ことが重要です。

 最初からジム通い等する必要はなく、最初は軽めのウォーキングからスタートしてください。無理なく続く有酸素運動から始めて、徐々に運動量を増やしていってください。また、エスカレーター等を使わずに階段で上り下りする、可能な限り歩いて移動するといったことも運動の一環となります。

 なお、実は運動により消費できるエネルギー量はそこまで多くないのですが、少しでも消費エネルギー量を増やす他にもいくつかのメリットがあります。まず「糖尿病予防に効果的」というポイントです。運動するとインスリンの効き目が改善されるので、血糖値を下げる効果が期待できます。

 次に「ストレスを発散できる」というポイントです。今までストレスの発散に際して食事や間食が少なからず関わっていた人の場合は特に効果的で、ストレスによる摂取エネルギーの増加を防ぐことができます。

メンタルケアを意識する

 メタボリックシンドロームの予防・改善のためには「メンタルケア」を意識して、ストレスの溜まらない生活を送ることも重要なポイントになります。一見、ストレスと内臓脂肪は関係し無さそうに見えますが、実は大きく関わっているのです。

 運動のところでも少し触れていますが、ストレスが溜まると「やけ食い」「やけ酒」など、飲食でストレスを発散する動きも見られます。当然ながらこれらの行動は摂取エネルギー量を増やし、内臓脂肪の蓄積につながります。

 そのため、ストレスを発散し、メンタルをケアする意識を日頃から持つことが必要になるのです。ストレスの原因となっているものがあれば、早めに解決しましょう。運動以外にも趣味などによってストレスを発散してください。

メタボリックシンドロームは腎臓病の原因、早めに改善を

 このように、メタボリックシンドロームはそれを構成する要素すべてが腎臓に対して悪影響を及ぼします。構成する要素が多いほど腎臓へのリスクが高まりますので、早めにメタボリックシンドロームを改善し、予防に努めることが腎臓を守り、透析療法の導入を防ぐ一因となります。

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