基礎知識

生活が激変!?透析治療開始がもたらす生活への影響とは?

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 医師から「そろそろ透析が必要です。」と言われたら、さまざまな不安に襲われるかもしれません。透析後の生活がイメージできないことから来る不安も大きいのではないでしょうか?今回は、透析後の生活についてお話していきたいと思います。

血液透析とは

 血液透析とは、人工腎臓(ダイアライザー)に血液を循環させ、血液中の老廃物や不要な水分を除去し、電解質などのバランスを調整します。血液透析を行うには、1分間に200mlもの血液を人工腎臓(ダイアライザー)に送る必要があります。そのため血液透析導入前には、十分な血流量を確保するために静脈と動脈をつないだ血管(シャント)を作成する手術を受ける必要があります。

入院

 病院にもよりますが日帰り~1泊入院です。手術は、局所麻酔で行おこなわれます。

通院

 一般的に透析は、「月・水・金」または「火・木・土」の週3回行います。1回に4時間の透析時間+通院時間が必要です。病院にもよりますが、午前透析、午後透析、夜間透析といった時間を選択することができます。

腹膜透析とは

 腹膜透析とは、お腹の中にチューブを入れ自分の腹膜を利用して、糖廃物や不要な水分を除去する方法です。腹膜透析を開始するには、お腹の中にチューブを入れる手術を行う必要があります。そろそろ透析が必要かなとなった時に前もってお腹にチューブを埋め込んでおく方法と、透析が必要になった時にチューブを入れる手術を行う場合とがあります。

入院

 お腹にチューブを埋め込むのみの場合の入院期間は、数日です。腹膜透析導入の入院期間は長くて1ヵ月程度です。お腹にチューブを入れる手術は、病院によって局所麻酔でおこなったり、全身麻酔で行ったりします。入院の間に腹膜透析の方法について患者さん自身が出来るように指導を受けます。

通院

 腹膜透析は、1日に4回お腹の中に溜めている液の交換を行います。1回のバッグ交換に掛かる時間は、40分~1時間程度です。夜間寝ている間(8~10時間程度)に腹膜透析液を交換する器械を使用して行う夜間間欠的腹膜透析という方法もあります。
 通院は、状態が安定していれば1ヵ月に1回程度になります。

腎移植とは

 腎移植とは、他の人から提供された腎臓を身体の中に移植し、腎臓の機能をほぼ正常近くまで回復させる治療方法です。提供していただく方を「ドナー」、提供を受ける側を「レシピエント」と呼びます。
腎移植には、脳死・心停止された方から提供を受ける「献腎移植」と、家族・身内から腎臓の提供を受ける「生体腎移植」の2つの方法があります。レシピエントの条件や生体腎移植のドナーになる条件などがあり、条件を満たした場合に腎移植が行われます。
献腎移植を受けるためには、日本臓器移植ネットワークへの登録が必要です。透析導入前であっても推算糸球体濾過量(eGFR)が15以下になると登録が可能です。登録後は、毎年の登録更新が必要となります。わが国の献腎移植の平均待機期間は、約14年~15年となっています。

入院

 入院期間は、1ヵ月程度です。手術の1週間前から数日前に入院し、免疫抑制剤の内服を開始します。腎移植は全身麻酔で行われます。手術直後は、ICU(集中治療室)で管理を行うこともあります。

通院

 術後数か月は、1~2週間に1回の外来受診が必要です。1年以降は、1~2ヵ月に1回程度の受診になります。

仕事

 透析を行っていても一般事務などの軽労働の仕事をすることはできます。

血液透析の場合

 週3回の通院が必要となるため、時間の調整が必要となります。週に3回仕事を抜けることが難しい場合には、仕事時間の後18時ごろから透析開始する夜間透析にするとよいでしょう。透析導入前に、透析の通院について職場へ相談しておくとよいでしょう。

腹膜透析の場合

 1日に4回のバック交換がある場合には、仕事中に1回は職場でバック交換をしなければなりません。その場合、埃のたたない部屋、人の出入りのない部屋が必要となります。導入前に場所が確保できるか職場に相談しておきましょう。営業職の方の場合、車の中でバック交換をする方もいらっしゃるので、場所が確保できない場合には車の中でもよいでしょう。夜間就寝中にお腹の液を交換する場合には、仕事への影響が少なくなっています。

腎移植の場合

 仕事の復帰については、主治医と相談しましょう。退院約2週間後からデスクワークでの仕事復帰は可能です。体を激しく動かす仕事の時は、退院後2~3ヵ月後からの復帰が望ましいでしょう。

食事

 食事制限は、透析開始後も必要です。

血液透析の場合

 水分・塩分・カリウム・リンのコントロールが大切です。食事を食べる量が増えた場合や、体調不良で食べる量が極端に減る場合には主治医へ相談しましょう。

腹膜透析の場合

 透析液に糖分が含まれているので摂取エネルギーは少し控えめにしましょう。透析液の中にカリウムが流れ出てしまうので、カリウム制限は緩やかです。腹膜透析から余分な水分量がしっかりと取れ、尿も出ていたら、飲水の制限も緩やかです。

腎移植の場合

 腎移植後は、普通の腎臓と変わりない働きをするので食事制限はありません。しかし、腎臓の負担にならないように塩分は控えめにしましょう。また、肥満になると腎臓に負担になるので太りすぎないように注意しましょう。グレープフルーツ・スウィーティ―・八朔などは、免疫抑制剤と一部の降圧剤の血中濃度を上昇させるので禁止です。

運動

 気分転換や筋力維持のためにも運動することをお勧めします。ウォーキングやジョギング、サイクリング、テニス、ゴルフなどすることができます。疲れ過ぎない程度にしておきましょう。心臓の機能が低下している場合には運動に制限があるので、主治医に相談してから運動するようにしましょう。

血液透析の場合

 透析の後は血圧が低下するとこがあるので、透析のない日に運動するようにしましょう。シャントの腕が圧迫されたり、シャントの部分に強い衝撃が当たったりしないように注意しましょう。

腹膜透析の場合

 腹膜透析の管を引っ張らないように注意しましょう。また、腹圧のかかるスポーツは避けるようにしてください。

腎移植の場合

 移植した腎臓は腹部にあるため、腹部に衝撃を受けるようなスポーツ(柔道や格闘技、サッカーなど)は避けた方が良いでしょう。脱水になると腎臓に負担がかかるため、スポーツで汗をかいたら水分を摂取するようにしましょう。

睡眠

 睡眠は、体調を整えるためにも重要です。昼間透析中に寝てしまうと、夜に寝られないということもあります。昼間は、なるべく起きておき生活のリズムを保つようにしましょう。不眠が続く場合には医師に相談しましょう。

入浴

 身体を清潔に保つことは大切です。

血液透析の場合

 透析後に入浴すると、血圧が変動したり、シャントから出血したり、感染することがあります。透析当日は、針を抜いた部分を濡らさないように軽くシャワーをする程度にしましょう。

腹膜透析の場合

 お腹からカテーテルが出ているので、状態によってはカテーテルの周囲が濡れないようにカバーをして入浴しなければなりません。入浴に関しては、主治医に確認してください。

服装

血液透析の場合

 シャントの腕がきつく締まるような服は避けるようにいてください。長期間血液透析をしているとシャントの血管が目立つので、気になる方は、夏場でも長袖を着用されています。透析中には、原則としてパジャマを持参し着替えるようにしてください。

腹膜透析の場合

 腹膜透析では、お腹の中に1.5L~2Lの液を溜めます。そのため、妊娠6ヵ月ぐらいの妊婦さんぐらいのお腹になります。お腹がきつく締まらないような服装にしましょう。また、ズボンのベルトなどでお腹の管の所が擦れないように注意しましょう。

妊娠

 男性の場合、透析を行っていても子供をつくる能力は保持されています。妊娠は、不可能ではありませんが、母児ともに妊娠・出産の危険性が高いため、妊娠を希望する場合には自己管理を徹底し、母体の十分な透析管理と産科医との連携が必要です。

腹膜透析の場合

 女性が妊娠した場合、妊娠中には血液透析への変更が必要になります。血液透析への完全移行は主治医と相談してください。

腎移植の場合

 移植後1年間は、免疫抑制剤の量が多く、拒絶反応の出現率が高いので妊娠はお勧めできません。免疫抑制剤や降圧剤のなかには妊娠中には内服できないものもあります。妊娠を希望する場合には主治医へ相談しましょう。

感染予防

 腎不全の患者さんは、抵抗力が弱っています。感染予防のためにも日頃から手洗いやうがいをするようにしましょう。冬外出時には、マスクの着用をするようにしましょう。

排便コントロール

 透析患者さんは、水分や食事の管理、薬の副作用や運動不足などで便秘や下痢になりやすくなります。症状が続く場合には、医師へ相談しましょう。

血圧測定

 血圧の変化を知るために毎日血圧を測るようにしましょう。起床後1時間以内、寝る前の1日2回測定することをお勧めします。

禁煙

 タバコは、心臓や手足など全身の血液の流れに悪影響を及ぼすので禁煙しましょう。

旅行

 透析治療を受けていても旅行することができます。旅行中も食事や水分に気を付けながら楽しむことも大切です。

血液透析の場合

 旅行の計画を立てる際には、旅行が可能か医師に相談しましょう。透析を3日以上あけることは生命に危険が及ぼす可能性があります。2泊3日以上の旅行の場合には、旅行先で透析を受ける必要があります。旅行先の透析施設を探すには、①自分で透析施設を探す、②主治医や病院スタッフに紹介してもらう、③旅行会社が企画する旅行透析のツアーに申し込む、の3つの方法があります。旅行先の透析施設との調整もあるので旅行の計画は、前もって立てるようにしましょう。海外旅行も可能ですが、やりとりに時間がかかることもあるので国内旅行以上に余裕をもった計画が必要となります。

腹膜透析の場合

 旅行の計画を立てる際には、旅行が可能か医師に相談しましょう。腹膜透析に使用する薬剤の配送を宿泊先などに依頼することができるので日程がきまったら、腹膜透析液の会社の担当者へ相談しましょう。旅行先で体調不良など起こった場合、診療情報提供書があると旅行先で受診する場合に安心なので医師に作成を依頼し持参しておくとよいでしょう。

腎移植の場合

 移植手術を受けて、6ヵ月後には海外旅行も可能です。衛生状態の良くない地域への旅行は、腸炎やさまざまなウイルス感染の危険性が高いので注意しましょう。旅行の際は、医師へ相談してから行くようにしましょう。

災害時

 災害は、いつ起こるかわかりません。そのため普段から水分や食事、薬の管理など意識しておきましょう。

血液透析の場合

 透析には清潔な水が大量に必要となります。そのため、被災状況によってはいつのも病院で透析をうけられない場合があります。2日以上透析をあけると生命の危険を及ぼすかの可能性があるので、透析可能な施設での透析を行う必要がでてきます。日頃から災害時の対応について確認しておきましょう。

腹膜透析の場合

 腹膜透析中であれば、治療を中断して避難します。夜間、腹膜透析を行っている場合には、状況に応じて1日4回の腹膜透析へ変更の必要があります。被災状況を医療機関に連絡するまたは、透析液の会社へ連絡し、腹膜透析液を確保するようにしましょう。

 透析開始後の生活について少しはイメージできたでしょうか?色々と書かれていてさらに不安になってしまった方もいるかもしれません。血液透析、腹膜透析、腎移植どれを選んでも導入時には約1ヵ月の入院期間が必要となります。その間に不安なことや分からないことは、医師や看護師、栄養士などに相談するようにしましょう。

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