検査

足の観察は重要!毎日の観察で自分の足を守ろう!!

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 透析患者さんの高齢化と糖尿病腎症からの腎不全患者さんの増加に伴って、足のトラブルが増えています。足を切断しないといけない状態になってやっと足の病変に気付くという方も中にはいらっしゃいます。足を守るためには、足病変を早期に発見し対処することがとても大切になってきます。今回は、足病変についてお話していきます。

足病変とは?

 足の病気や障害のことを“足病変”といいます。巻爪、白癬(水虫)胼胝(タコ)、鶏眼(ウオノメ)、角化症といった外的な原因で起こる皮膚科領域の疾患や、糖尿病の合併症である末梢神経障害や動脈硬化、機能不全で起こるリンパ浮腫、また、変形性関節症、関節リウマチ、外反母趾などの整形外科領域のもの、静脈不全や下肢閉塞性動脈硬化症(ASO)を含む末梢動脈疾患(Peripheral Artery Disease :PAD)などの内的な原因で起こる疾患があります。血流障害や神経障害がすすむと軽度の外傷でも傷が治りにくく、潰瘍や壊疽(体の組織が黒色や緑色に腐敗した状態)の原因となります。

末梢動脈疾患(PAD)とは?

 PADとは、四肢の末梢血管が動脈硬化症の変化を受けることにより、血管が狭窄あるいは閉塞して、四肢の筋肉や皮膚の血流が著しく低下する状態が末梢血管循環障害です。
 透析患者さんは保存期腎不全の時点から動脈硬化が進んでいると言われています。その原因は、高血圧や尿毒症性物質が考えられていますが、それ以外の重要な因子として糖尿病、喫煙、加齢、高脂血症が挙げられます。また、長期透析に伴い、カルシウム・リン代謝異常によって血管の石灰化を引き起こし、動脈硬化を促進する原因となっています。
 PADになると、しびれや痛み、悪化すると潰瘍や組織欠損が生じ、放置すると足の切断を余儀なくされることもあります。
 透析患者さんでPADを合併する率非常に多く、症状があるPADで10~20%、症状のないPADを含めると30~40%に達するといわれ、また四肢切断を余儀なくされる患者さんは、1.6%にものぼるといわれています。近年、糖尿病性腎症からの透析導入や透析導入の年齢が高齢化しています。今後、PADを合併している透析患者さんが増加してくるとされています。

末梢動脈疾患(PAD)の症状

 PADの典型的な症状は、歩行や運動時に足に痛みやこむら返りなどが生じ、休憩すると症状が軽減することが特徴です。しかし、透析患者さんでは歩行困難な状態や運動能力の低下などで、半分以上の方が無症状です。
 PADは、その症状はその状態や度合いによって表1のように分類されます。Ⅲ度、Ⅳ度は、些細な足の傷、熱傷、靴擦れなどがきっかけとなって発症したり、発見されることも多く、日常の足の観察と手入れ(フットケア)が重要です。

表1 Fontaine 分類

Ⅰ度

足の冷感、しびれた色調の変化(蒼白)

Ⅱ度

少し歩くと痛くなるが、休むと回復しまた歩ける(間歇性跛行:かんけつせいはこう)

Ⅲ度

何もしていなくても痛みが起こる(安静時疼痛)、足先の色が悪い

Ⅳ度

足の傷が治りにくい、ただれている、腐って黒く変色している(潰瘍、壊疽、組織欠損)

Ⅳ度の状態を「重症下肢虚血(CLI)」といい、適切な治療を施さないとやがて足の切断をしなければなりません。

糖尿病性腎症から透析導入になった患者さんは潰瘍や壊疽が発生しやすい

・知覚神経障害から痛みや温度を感じにくく、傷やヤケドに気づかない
・運動神経障害から筋肉や腱組織のバランスが崩れ、足の指が曲がってきたり、足全体の形が変わったりする
・自律神経障害から発汗が減少し、皮膚の乾燥・亀裂が発生する
このような条件から、糖尿病性腎症からの透析導入患者さんは潰瘍や壊疽を発生しやすくなっています。

末梢動脈疾患(PAD)を早期に発見するには?

 間歇性跛行がなく無症候の状態であることが多いため、自覚症状だけでは早期発見することはできません。大切なことは、毎日足を「みる」(見る、視る、診る、看る)ことです。

足をチェックする4つのポイント

  • 見た目
  • 温度
  • におい
  • 感覚

①見た目

・タコやウオノメ、水虫はないか?
・爪が白く濁ったり、巻爪はないか?
・靴ずれはないか?
・足や指の形に変形はないか?
・かかとが乾燥したり、ひび割れしたりしてないか?
・むくんだりしてないか?
・足の形に変形はないか?
・皮膚が赤や紫、黒色に変色していないか?

②温度

・一部だけ冷たかったり、熱をもったりしていないか?

③におい

・悪臭はないか?

④感覚

・痛みやしびれ、感覚がない部分はないか?

 上記のような症状がないか毎日、観察をするようにしましょう。もし、異常を見つけた場合や、いつもと違うことがあれば、透析施設の医師や看護師へ伝えるようにしてください。透析クリニックでもフットケアを行っている場合は、その施設でケアしてもらうことができます。フットケアを行っていない施設では、専門病院へ紹介してもらい、そこでケアしてもらうようにしましょう。

末梢動脈疾患(PAD)の検査とは?

 定期的に透析患者さんの足を観察し、皮膚の色調をみたり、皮膚温や足背動脈を触診したりして下肢の虚血状態を把握します。
 生理・画像検査には以下のようなものがあります。

①ドップラー検査

 ドップラーという器具で血流の音を聴きます。正常な場合、心臓に合わせた拍動が聞こえてきますが、異常な場合は、弱く低い音が聴こえたり、全く聴こえなかったりします。

②足関節上腕血圧比(Ankle Brachial Index:ABI)

 足首と上腕の血圧を測定し、その比率(足首収縮期血圧÷上腕収縮期血圧)を計算したものです。動脈硬化が進んでいない場合、横になった状態で両腕と両足の血圧を測ると足首の方がやや高い値を示します。しかし、動脈に狭窄や閉塞があるとその部分の血圧は低下します。動脈の狭窄や閉塞は下肢の動脈に起こることが多いため、上腕と足首の血圧の比によって狭窄や閉塞の程度を知ることができます。
 測定方法は、ベッドの上で仰向けになった状態で心電図、両腕と両足首に血圧計を装着して測定します。検査時間も5分から10分程度で終了します。

ABI評価基準

ABI<0.9

狭窄または閉塞の疑いあり

ABI<0.8

高率で狭窄または閉塞の疑いあり

0.5<ABI<0.8

閉塞が一か所ある可能性あり

0.5<ABI

閉塞が複数個所ある可能性あり

ABI>1.3

動脈が石灰化している可能性あり

 ABIは、通常1.0以上あるものが0.9以下を示した場合、末梢動脈閉塞の可能性があります。透析患者さんでは血管の硬化のため、ABIが1.2以上と高く出ることがあります。

③超音波検査

④サーモグラフィ

 表面の温度分布を平面的に評価し、狭窄部位を推定することができます。

⑤MRI

⑥血管造影検査

自分の足を守るために重要なことは?

1.ケガに注意しましょう

・切り傷やすり傷を見つけたら消毒をしましょう。感染防止のため、水ぶくれは破らないようにしましょう。
・傷を作ってしまった場合は、流水で綺麗に洗い流し、清潔なガーゼや絆創膏を貼って保護しましょう。
・傷の周囲が赤くなったり、熱をもったり、はれたり、うみが出たりしたら、すぐに医療機関を受診することが大切です。

2.ヤケドに注意しましょう

・お風呂のお湯やこたつ、電気カーペット、カイロ、湯たんぽや電気あんか等による低温やけどには注意しましょう。
・やむをえず使用する際は、寝る前にスイッチを切る、設定温度を最低にする、厚手のタオルで包むなど、やけどの予防対策が大切です。
・バスや電車の温風吹き出し口に注意しましょう。
・夏の炎天下では、素足で砂浜やプールサイドを歩くとヤケドをする場合があるので注意しましょう。

3.毎日足を洗い、清潔にしましょう

・感染を防ぐためには、足を清潔に保つことが重要です
・石けんを良く泡立てて、やわらかいスポンジやタオルで優しく洗いましょう。
・足の裏や指の間もしっかりと洗いましょう。
・洗った後は、皮膚を傷つけないように、押さえるようにしっかりと水気を拭き取りましょう。足の指の間もよく拭きましょう。

4.皮膚の乾燥やひび割れには保湿クリームを塗りましょう

・皮膚が乾燥している場合は、保湿クリームを塗って保湿しましょう。保湿クリームを指の間に塗ると湿って水虫の原因になることがあるので避けるようにしましょう。

5.自分の足にあった靴を履き、靴ずれを防止しましょう

・つま先に1センチ程度の余裕があり、足の形にあった靴を選びましょう。
・革や内貼りが柔らかく、靴の内部に硬い縫い目のない靴を選びましょう。
・クッション性がよく、靴底が安定している靴を選びましょう。
・サンダルやヒールの高いものは日常的に履かない。
・運動や散歩をする時は、足首が固定されるよう、紐やマジックテープが付いた運動靴を履きましょう。
・神経障害がある方は、靴の中に小石などの異物がないか、よく確認してから履きましょう。

6.素足を避け、靴下を履きましょう

・靴下を履くことで水虫の予防や足の保護になります。
・吸湿性の良い綿素材の靴下を選びましょう。
・内側に縫い目がゴツゴツしていない、きつくない靴下を選びましょう。
・靴下の重ね履きは血行を悪くしてしまうことがあるので避けましょう。
・5本指靴下は、水虫予防にお勧めです。

7.足をふやけさせないようにしましょう

・雨の日などに濡れた靴を長時間履かないようにしましょう。

8.爪は正しく切りましょう

・深爪に注意しましょう。
・爪の角は、深く切り落とさないようにしましょう。
・巻き爪になっている場合は長めにまっすぐに切りましょう。

9.タコ、ウオノメは自分でけずらず、医療スタッフに処置してもらいましょう

・タコやウオノメを自分でけずったり、市販薬を使ったりすることは危険です。医療スタッフに相談しましょう。

10.正座はなるべく避けましょう

・正座をすると足の血流が悪くなるので、なるべく避けるようにしましょう。

11.定期的な診察を受けましょう

末梢動脈疾患(PAD)の予防法方法と治療方法とは?

 予防と治療には、リスクファクターの積極的な改善が重要です。腎不全はPADのリスクファクターであり、透析患者さんはハイリスク状態にあることを認識しておきましょう。リン・カルシウム管理、血圧、貧血、糖尿病、禁煙、脂質代謝異常といった危険因子を改善・予防することがとても大切です。
 PADの治療には、薬物療法に加え、重症度に応じた傷の治療、高圧酸素療法、LDLアフェレーシス、血行再建術、再生医療などがあります。

なぜ足の管理が重要なの?

 透析患者さんの死亡の原因には、動脈硬化による心脳血管疾患、免疫低下による感染症が上位を占めています。透析患者さんの死因にどのくらい足病が関与しているかはわかりません。しかし、足病を合併した多くの患者さんは、動脈硬化症が全身に及んでおり、心臓や脳の血管疾患を合併していることが多い。また、下肢の潰瘍から感染症を発症するともあります。
 PADに罹患している透析患者さんは、PADに罹患していない透析患者さんと比較すると生存率は低くなっています。また、下肢切断術後の透析患者さんと非透析患者さんの生存率を比較すると、透析患者さんの生存率は極めて低くなっています。
 現在、糖尿病や維持透析などの原因による足病変の重症化により下肢切断となる人は、年間1万人以上といわれています。足を切断してしまうと寝たきりになる人が多く、1年生存率は透析患者で52%、5年になると80%以上が死亡しているという報告もあります。

http://www.dm-net.co.jp/footcare/dialysis/001.php

 日頃から足病変が起こらないように足をケアしていれば、そこまで恐れる必要はありません。毎日観察をすることで、異常を早期に発見し対処すると足を守ることができます。観察していて気になることや、心配なことがある時には、医師や看護師へ相談するようにし、自分の足は自分で守るよう心掛けていきましょう。

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