食事療法

透析になっても外食できる!透析患者さんの外食時の注意点とは?

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 人工透析を始めると、さまざまな食事制限が設けられることになりますが、透析患者さんの中には「外食」を好んでいる人も少なくないでしょう。透析による食事制限により、外食についても厳しい制限を設けなければならなくなってしまうイメージが強いのではないかと思います。

 しかし、特に外食を好んでいる人にとって、それを禁止されてしまえば「生活の質」を大きく低下させてしまうことになります。生活の質の低下は精神的に健康な生活を送ることを妨げてしまいます。

 そこで、透析患者さんも楽しめる、外食時の注意点について説明します。

透析患者さんが外食に気をつけなければならない理由

 まず最初に、この記事を読む上で基本となる「なぜ透析患者さんは外食に気をつけなければならないのか?」ということについて説明しておきます。

透析患者さんは食事に注意が必要

 透析治療を受けている人は、食事においてさまざまな制限が設けられることになります。透析患者さんの食事制限は、たまに行く外食だからという理由で無視できるわけではありません。むしろ「外食だからこそ」注意しなければならないと言えます。

透析患者さんの食事制限と外食

 透析患者さんが外食だからこそ注意をしなければならないというのは、外食は「自分で作らないから」です。透析患者さんは水分や塩分などを控えなければなりません。自分で作るものであれば制限されている栄養を制限することも難しくないのですが、外食だと何がどのくらい含まれているか、写真や食品サンプル、メニュー名を見るだけではわかりません。

 さらに厄介なのは、外食は「濃い味付けが多い傾向にある」ということです。味付けが濃いということは、それだけ塩分が多いということになります。出された料理を深く考えずに完食してしまえば、透析患者さんに必要となる食事制限はほぼ確実に破ってしまうことになります。

「食べてはいけない」というわけではない

 しかしながら、「外食をしてはいけない」「外で物を食べてはいけない」というわけではありません。確かに外食は自炊と比較して水分や塩分などについて問題が生じてしまいます。

 しかし、だからといって「透析患者さんは外食NG」と解釈するのは早計です。外食だからと言って特殊な成分が含まれているというわけではありません。問題なのは塩分等が自炊の場合よりも多く含まれている可能性が高いということを、透析患者さんが理解しておくことです。

 自炊の場合と比較して、外食を全く同じ感覚で楽しむことは避けなければなりません。ですが、押さえるべきポイントをしっかりと理解すれば、透析患者さんが外食を楽しむ余地は大いにあると言えます。

透析中の食事制限について

 透析中の食事制限については、簡単にまとめると以下のポイントに注意する必要があります。

水分の制限

 腎機能が低下すると、尿によって身体の余分な水分を排出できなくなってしまい、身体の中に余分な水分が蓄積してしまいます。透析患者さんが水分をとりすぎてしまうと「体重増加」「むくみ」「血圧上昇」などの症状を呈するようになります。最終的に「高血圧」「肺水腫」「心不全」といった疾患の原因となるので、水分摂取は厳しく制限する必要があります。

塩分の制限

 塩分の摂取制限も、前述の「水分の制限」に深く関わっています。塩分をとりすぎてしまうと、患者さんはのどが渇いて水分を多めに摂取してしまいます。また、血圧が上がり、腎臓に負担がかかるというデメリットもあります。そのため、塩辛い食べ物は避けなければならないのです。

カリウムの制限

 腎機能が低下すると、余分なカリウムを尿として排出する機能が低下してしまいます。その結果、血液中のカリウムが高い状態が続き、「高カリウム血症」を引き起こしてしまいます。これにより「不整脈」など、心臓に深く関わる症状を呈することになってしまいます。

リンの制限

 腎機能が低下すると、余分なリンを尿として排出する機能が低下してしまいます。その結果、血液中のリン濃度が高い状態が続き、「高リン血症」を引き起こしてしまいます。これにより副甲状腺ホルモンが過剰分泌され、骨のカルシウムが血液中に溶けだして骨が弱くなります。また、リンとカルシウムが結合して「血管石灰化」が進み、動脈硬化を起こして「心筋梗塞」や「心不全」の原因になります。

適度なエネルギーとタンパク質摂取

 透析患者さんは、「エネルギー」と「タンパク質」を適切に摂取することも重要です。透析患者さんは貧血になる傾向があり、食事制限が課せられることで必要な栄養・エネルギーまで不足してしまう恐れがあります。特に、透析を受けている中でどんどん痩せているという方は、エネルギー量が足りず、栄養状態が悪くなっている可能性が考えられます。食事を見直して、運動量を確保しましょう。

透析患者さんが注意したい外食の基本

味付けを注文する

 料理を注文する際に「薄味にしてください」と注文してみてください。常に可能というわけではありませんが、お店によっては対応してくれる可能性があります。もし薄味にしてもらえれば、それだけ塩分を気にせずに外食を楽しむことができます。

ソースを別添えにしてもらう

 同様の観点から「ソース」や「ドレッシング」を別にしてもらうという方法も有効です。とんかつやハンバーグ、サラダにソースやドレッシングを最初からかけてもらうのではなく、別に用意してもらうことで自分でかける量を調整できます。もしくは別添えではなく、ソースやドレッシング無しで注文するという方法もありです。

メインのおかずは食べきらない

 不満も多いでしょうが、メインとなるおかずは食べきらずに残すことをおすすめします。メインのおかずには「肉類」「魚類」を使っており、これらの食材にはリンやカリウムが多く含まれています。3分の1位を目安に残すようにしましょう。また、これらの食材の量を選べる場合には、できるだけ少ない量にして注文しましょう。

注文しすぎない

 たまの外食だからと、注文しすぎることは絶対に避けてください。透析患者さんは適度にエネルギーやタンパク質を摂取しなければなりませんが、食べ過ぎにも注意が必要です。どうしても複数の料理を注文したいのであれば、同行者とシェアする形をとることをおすすめします。

透析患者さんが注意したい「和食」

漬物は食べない

 和食で注意すべきポイントは「漬物」です。一般的な「長期保存できる漬物」の塩分は、使用している野菜の10%程度の塩を使っているとされており、かなり高い塩分濃度を持ちます。塩分濃度が比較的低い「浅漬け」ならまだしも、基本的に漬物は食べずに残すようにしてください。

味噌汁は飲まない

 同じく和食で塩分濃度が高い食べ物といえば「味噌汁」です。定食ものであれば漬物と並んでどのメニューでもほぼ確実にセットになっている料理であると言えます。ここで重要なのは、塩分濃度が高いのは味噌汁の汁の部分であり、中に入っている「具材」についてはその限りではないということです。具材の種類にもよりますが、汁は飲まずに、中の具材だけであれば食べてもOKです。

キャベツに注意

 例えば「とんかつ定食」がイメージしやすいと思いますが、「キャベツ」がセットになっている定食には注意が必要です。キャベツは水分とカリウムが多く、食べ過ぎに注意です。特に「キャベツはおかわり自由」なお店も少なくないので、おかわりだけは絶対に避けてください。

透析患者さんが注意したい「洋食」

ジャンクフードは避ける

 日本人も「ハンバーガー」や「フライドポテト」といったジャンクフードには馴染みがあります。しかし、透析治療を受けている方はできる限りこうしたジャンクフードは避けるべきです。高塩分な食べ物が多く、食品添加物としてリンも多く使われています。

ポテトに注意する

 洋食で付け合せやサラダによく用いられている「ポテト」は注意が必要です。イモ類にはカリウムが多く含まれており、カリウムに制限を設けられている患者さんにとって注意すべき料理です。食べすぎないように注意しましょう。

肉類の摂取に注意する

 洋食の外食においては特に「肉類」の摂取に注意したいところです。ステーキやハンバーグ、ハンバーガーのように、肉を使ったメニューは一人前の量が多目に提供されています。食べすぎないように注意しましょう。

コーンスープは控える

 洋食のセットでよく見かけるメニューに「スープ」があります。スープは、実は透析患者さんが注意すべきメニューの一つでもあるのです。

 まず、スープは塩分が多く含まれています。1杯のスープだけで約1gの塩が含まれているため、他の料理と合わせて塩分の過剰摂取になる恐れがあるため、控えめにしておく必要があります。水分の過剰摂取にもつながります。

 また、「コーンスープ」のトウモロコシにはカリウムが多く含まれています。100gあたり290mg程度と、食べ物全体で見るとそこまで豊富に含まれているというわけではありませんが、カリウム制限を課せられている透析患者さんにとっては無視できない数字です。

デザートのフルーツは残す

 洋食には、デザートとして「フルーツ」が出されることが多いです。しかしフルーツにはカリウムが多く含まれており、カリウム制限の妨げとなります。一人前以上は食べないようにしましょう。

透析患者さんが注意したい「ラーメン」

スープは飲まない

 ラーメンで最も注意しなければならないのは「スープ」です。ラーメンスープは水分と塩分の塊なので、もし麺とスープを完食してしまえばそれだけで1に血の塩分摂取量をオーバーしてしまいます。スープは残してください。

チャーシューと玉子の黄身は残す

 チャーシューは肉類なのでリンが多く含まれているだけでなく、煮込まれているため塩分も多く含まれています。また、代表的なトッピングの一つに「玉子」がありますが、黄身には多くのリンが含まれています。両方とも食べるのは避けて、どちらかは残すようにしましょう。

餃子はタレを付けない

 ラーメン店や餃子の専門店で食べる機会の多い「餃子」ですが、注意したいのは「餃子のタレ」です。餃子にはそれだけで下味がついているので、タレを付けなくても十分に食べられます。減塩のため、タレを付けずに食べてみてください。もし自分で調味料を調整できるのであれば、酢と醤油を少なめ、もしくは酢のみで調整してみましょう。

 また、餃子に使われているひき肉には当然ながらリンが含まれています。食べすぎないように注意してください。

透析患者さんが外食をすることのメリット

 食事制限が設けられている透析患者さんは、自分で作らない外食においてはさまざまな点に注意しなければならなくなります。しかし、透析患者さんが外食に行くことにも一定のメリットが有ることを理解しておきましょう。

ストレス発散になる

 まず第一に「ストレス発散になる」というポイントです。食事というものは生活の質に深く関わっており、美味しいものを食べることで透析生活で溜めているストレスを発散できます。特に、透析を受ける前まで外食に行くことを生活において大きな楽しみとしていた人にとっては、外食に行けないということは大きなストレスになる恐れがあるので、それを防止することも健全な透析を続けていく上で重要なポイントになります。

 外食においては自炊以上にさまざまな点に注意しなければならず、窮屈に感じてしまうでしょう。しかし、押さえるべきポイントをしっかりと押さえて、食べて良いものと食べるのを避けなければならないものを明確に区別することで、透析患者さんも外食を満喫できます。

食事のレパートリーを増やすきっかけになる

 第二に「食事のレパートリーを増やせる」というポイントです。外食では、お店ごとにさまざまなメニューが提供されています。それを実際に食べてみることで、今まで作ったことがない料理を知るきっかけになるかもしれません。

 昨今はインターネットで無料で閲覧できるレシピサイトも利用できます。透析中ということで食事に関する制限がかけられているので、日々の食事の満足度を高めることは重要なことです。外食をきっかけに新しい料理のレパートリーの足がかりにして、実際の作り方やアレンジはレシピサイトを参考にすることで、自宅での食事の満足度を上げられる可能性があります。アレンジするときに食事療法を意識することはお忘れなく!

家族との時間を確保できる

 第三に「家族との時間を確保できる」ということです。医療機関で受ける血液透析は、通院にかかる時間も含めれば4~5時間程度の拘束時間が発生します。これにより、必然的に家族と過ごせる時間は少なくなります。

 特に、仕事の都合でご家族と別居されている方は、一緒に外食をすることで家族との時間を確保することができます。ご家族と外食による楽しい時間を共有することもまた、長く透析治療を受ける上で重要なことであると言えます。

外食の回数が多い人は要注意、ポイントを押さえて外食を楽しみましょう

 このように透析患者さんであっても外食を楽しむ余地は十分にあります。注意しなければならないポイントは少なくありませんが、減塩や減カリウムなどの基本をしっかりと押さえていればそこまで複雑なことはありません。

 外食の回数が多い人は、注意しなければならない食事の回数が多いということになります。外食がたまにという人と比べて制限度合いが厳しくなりますので、注意すべきポイントをしっかりと押さえ、節度をもって外食に行ってください。

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