症状

慢性腎臓病患者さんは、目の病気にも注意が必要!

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 慢性腎臓病の患者さんは、全身にさまざまな症状が現れます。中でも、生活に直結するような症状は見過ごすことができないのではないかと思います。そんな症状の一つが「目の病気」です。

 視力に関係する目に何らかの病気を患えば、最悪の場合は失明の憂き目に合う可能性すら否定することはできません。なぜ慢性腎臓病を患うと目の病気のリスクが関係するのか、そのメカニズムを理解することは重要なことです。

 そこで、慢性腎臓病患者さんが注意すべき目の病気にどのようなものが挙げられるのか、どういった症状を呈するのか説明します。

尿毒症による目の障害

 尿毒症とは、腎機能が低下することにより、尿中に排泄されるべき老廃物等が血液中に蓄積することで引き起こされる中毒症状です。全身の臓器や神経に何らかの症状が及び、目においては視力低下や眼底出血の原因となる可能性が考えられます。

尿毒症の原因

 尿毒症の原因は、腎臓の機能が極度に低下することです。腎臓には余分な水分や老廃物を除去する機能があり、この機能が低下することによって身体の水分量や電解質の調整の異常や、ビタミンDなどの産生量の低下などを引き起こします。

尿毒症の症状

 尿毒症を患うと、目だけでなく全身にさまざまな症状が現れるようになります。最初のうちは身体がだるく感じたり、疲れやすくなるといった、はっきりとしない症状がメインとなります。しかし症状が進むにつれて意識障害やけいれん、心不全などの多様な症状を表す可能性があります。

腎臓疾患の合併症による目の障害

 腎臓疾患は、高血圧や貧血などの合併症を引き起こします。これらの合併症は網膜に対して悪影響を及ぼして、浮腫や出血を引き起こします。腎臓病の種類・状況によって網膜に与える影響が大きく異なります。

 急性腎炎の場合であれば、腎炎の回復に従って網膜症の症状も消失することが多いです。しかし慢性腎臓病の場合は患者さんの症状次第では、視力が低下するケースもあります。
 また、慢性腎炎の場合は網膜の黄斑部に、放射線状の白斑が現れることがあります。

腎臓疾患の合併症の原因

 腎臓疾患による腎機能の低下によって、血液量が増加して血圧が上昇し、腎臓に負担がかかるという悪循環が発生します。また、赤血球をつくる働きを促すホルモンの分泌が減ることで、貧血を引き起こします。

 これらの合併症が網膜に悪影響を及ぼし、視力低下などの目の症状を引き起こすとされています。検査においては眼科だけでなく、内科の受診が必要になります。

腎臓疾患の合併症の症状

 腎臓疾患の合併症の症状は腎臓の状態により網膜への影響が異なるため、症状も患者さんによって異なります。腎臓の病気が急性か慢性かによって症状が大きく異なり、急性の場合は白斑や出血を引き起こし、慢性の場合はそれらの症状に加えて網膜剥離からの視力低下を引き起こすケースが考えられます。

糖尿病性網膜症による目の障害

 糖尿病性網膜症とは、糖尿病の三大合併症の一種です。同じく糖尿病の三大合併症の一種である「糖尿病性腎症」は、透析治療を受けている人の透析の原因となった疾患のうち、全体の約4割で最大の原因となっている病気です。慢性腎臓病を患っている人のうち、糖尿病を原因としている患者さんは糖尿病を原因とした目の病気にも注意が必要です。

糖尿病性網膜症の原因

 糖尿病性網膜症の原因は、病名にあるとおり糖尿病が原因となります。糖尿病を発症するとインスリンの効き目が悪くなり、血液中の糖分を細胞が吸収する働きが低下します。これにより高血糖状態が継続し、血管に障害を引き起こします。

 高血糖による血管への障害は、血管の大小を問わず全身のあらゆる場所で引き起こされます。これには目の網膜にある血管も含まれています。目の網膜の血管は細いため、特に障害を受けやすいとされており、血管が詰まり、出血を引き起こします。

糖尿病性網膜症の症状

 糖尿病性網膜症は、初期の段階では自覚症状がほとんどありません。この時点では網膜の血管に小さな出血が起きていることが多く、しかしながら目立った症状が起こることはほとんど無いと言えます。

 これが進行して病気が中期に進むと、視界が霞んできます。この頃になると網膜の血管に詰まりが起こっていることが多いです。さらに糖尿病性網膜症が進行すると視力の低下や、飛蚊症(ひぶんしょう)を発症するケースもあります。網膜の血管は大きく出血を起こしていることが考えられ、最悪の場合には失明に至ることもあります。

糖尿病を原因とする主な目の病気

白内障

 白内障は、目の中にあるレンズの役割をしている「水晶体」が濁ってしまう病気です。加齢に伴って発症するケースが最も多く見られ、糖尿病においても加齢性白内障が併発する「仮性糖尿病白内障」が特に多く見られるとされています。

 それに対して、若年層において見られる糖尿病白内障のことを「真正糖尿病白内障」と言います。こちらの場合は加齢に伴う白内障の進行に関係せず、高血糖状態が継続することによる白内障の進行によるものです。

 真正糖尿病白内障の場合、白内障の症状である目のかすみやまぶしさを感じるといった症状が急激に進行するケースが多いです。一方で仮性糖尿病白内障の場合はそれらの症状が徐々に進行するケースが多いです。

緑内障

 緑内障とは、眼圧の上昇によって目から入る情報を脳に伝達する視神経に障害が起きる病気です。これにより視野が狭くなり、場合によっては失明に至る目の病気であるとされています(失明の原因第1位、第2位は糖尿病性網膜症)。

 視野が狭くなる症状は徐々に進行し、両方の目にその症状が同時に進行することは稀です。そのため、かなり病気が進行するまで自覚症状に乏しいという特徴があり、定期的に眼科検診を受けることで早期発見につなげることができます。

 糖尿病によって網膜の血管が詰まり、神経が酸欠の状態になってしまいます。この酸欠状態が目の前の方にまで及ぶと、毛様体や虹彩に新生血管が生じます。しかし、この新生血管は出血しやすく、また隅角を塞いでしまうことで眼圧を上昇させてしまいます。

人工透析と視力低下

 腎機能が大きく低下してしまった患者さんにとって、腎移植を除けば人工透析が必要不可欠な治療法であることは言うまでもありません。しかし、その人工透析が視力低下の原因になるケースも考えられます。

人工透析による視力低下

 人工透析による視力の低下は、「透析治療導入初期」に起こるものと「透析治療導入後の長期に渡って」起こるものの2種類が考えられます。血液中の電解質のバランスが崩れたり、網膜の出血を原因として視力の低下が起こります。

 長期に渡って人工透析を受けている患者さんは、白内障の発症や角膜の混濁などによって視力の低下が見られるケースがあります。また眼圧の上昇が一時的な場合であっても、元から緑内障を指摘されている場合には視野の障害が起こることが考えられます。

透析治療=視力低下ではない

 ただし、すべての透析患者さんに視力低下が見られるというわけではありません。透析治療に至る原因となる腎臓疾患や糖尿病を原因とした視力低下や、その合併症による視力低下などの原因が考えられます。透析治療=視力低下と諦めるのではなく、視力の低下を自覚したら早めに検査を受けてその原因を明確にし、対処することが重要です。

慢性腎臓病や透析治療を受けている患者さんは視力の低下に注意

 このように、慢性腎臓病を患っていたり、透析治療を受けるほどに腎機能が低下している患者さんは、さまざまな原因によって目の病気を患う可能性があります。目の病気による視力低下は生活の質に直結し、最悪の場合は失明に至って生活基盤を大きな悪影響を及ぼす可能性すら危惧されます。

 目の症状や視力に異常を感じたら、早めに病院で検査を受けましょう。早めに対処できれば視力低下や失明といった事態を避けることにつながります。

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