病気の悪化には、さまざまな原因が考えられます。加齢とともに自然に悪化するものもあれば、生活習慣や他の病気を原因として悪化するケースもあります。何にしても、病気を悪化させることは良くないことです。
これには「慢性腎臓病」も該当します。慢性腎臓病が進行すると腎機能が致命的に低下し、人工透析を必要とする人生を余儀なくされてしまいます。そうならないためには、慢性腎臓病を悪化させる原因を知り、その進行を緩やかに抑えることが重要です。
そこで、腎臓の機能を悪化させる原因やその対策について説明します。
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腎機能の低下を抑えることの重要性
まず最初に、慢性腎臓病の進行を抑えて、腎機能の低下を予防することの重要性について説明しておきます。この記事を読んでいる方の中には「いざ慢性腎臓病だと診断されても、治療してもらえば元通り」と思っている方もいらっしゃるのではないかと思います。しかし、そんな風邪を引いた時の言い訳のような考え方は慢性腎臓病には通用しません。
残念なことではあるのですが、慢性腎臓病においてある程度まで腎臓の機能が低下してしまうと、専門医の治療を受けるとしても慢性腎臓病を発症する前の健康な状態の腎臓に戻すことはできません。では慢性腎臓病の治療は何をしているのかと言えば、慢性腎臓病の進行を少しでも抑えて、人工透析を必要とするステージに至るまでの時間を引き伸ばすことです。
治療内容次第では腎機能低下を阻止して、これ以上腎機能を低下させずに人工透析を必要としない生活を送ることもできます。しかし、仮に最大を100とする腎機能が50まで低下してしまうとして、これを100に戻すことは極めて困難です。戻せない以上、どれだけ現在の腎機能を維持して、腎機能の低下を予防できるかが重要なのです。
腎臓の機能を悪化させる原因
運動不足
腎機能を低下させる原因として「運動不足」が挙げられます。
運動不足による高血圧
運動不足が腎機能を低下させる原因は、運動不足による高血圧が関係しています。運動不足は筋肉量の低下を招いてしまいます。血管は筋肉によって作られているため、運動不足で筋肉量が減少すると血管を固くする可能性があります。
血管が固くなると血行が悪くなり、血液により運ばれている栄養や酸素が全身に十分に送り届けられなくなります。体はその状態に対して血液量を増やすことで対応しようとします。血流量が多くなるということは、血圧が上昇するということになります。運動不足を解消しないとこの状態が続くので、慢性的な高血圧を招いてしまいます。
血圧が高い状態が続くと、小さな血管の集合体である腎臓の糸球体にも負担がかかります。腎臓は余分な水分をろ過しているのでその機能が低下すると血流量が多くなり、血圧がさらに高くなるという悪循環を生みます。
運動不足による糖尿病
運動不足だと、糖尿病を発症するリスクが高くなります。適度な有酸素運動は血糖値を下げるインスリンの働きを良くし、糖尿病予防に役立ちます。運動不足だとその効果が期待できず、生活習慣によっては糖尿病を発症しやすくなってしまいます。
糖尿病は、血糖値の高さによって全身の血管を傷つけてしまいます。腎臓は小さな血管が集合しており、糖尿病によるダメージは腎臓にも及びます。これを「糖尿病性腎症」と言い、糖尿病の3大合併症の一つにして透析療法を導入した理由の4割以上を占めています。
運動不足による脂質異常症
運動不足が続くと、脂質異常症の原因になります。運動不足によりHDLコレステロールが減少し、中性脂肪が増加します。これにより動脈硬化が進み、腎臓の糸球体に動脈硬化が起きて「糸球体硬化症」を促進すると言われています。
メタボリックシンドローム
メタボリックシンドロームやその予備軍である人は、腎機能を低下させてしまう可能性が考えられます。
メタボリックシンドロームとは?
メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪型肥満に加えて高血圧・糖尿病・脂質異常症のうち2つ以上を合併している状態のことを言います。前述の通り高血圧や糖尿病、脂質異常症は腎機能を低下させる原因となるため、メタボリックシンドロームの人は構成している合併症によって慢性腎臓病を進行させ、腎機能が低下してしまう可能性が高いのです。
また、内臓脂肪型肥満だけでも腎機能を低下させる要因となります。内臓脂肪型肥満は糖尿病性腎症の指標である「アルブミン尿」が出やすくなることが知られています。
飲酒
腎機能を低下させる原因として「飲酒」が挙げられます。適度な飲酒は腎臓にもほとんど影響しませんし、そもそも「過度な飲酒=(腎臓ではなく)肝臓に良くない」というイメージを持っている人が多いでしょう。しかし、過度な飲酒は腎機能にも悪影響です。
適度な飲酒と腎臓
適度な飲酒を心がければ、血流が良くなって腎臓にも良い影響を及ぼす可能性があります。リラックス効果により暴飲暴食を抑えられれば、やはり腎臓にもプラスに働きます。
過度な飲酒と腎臓
しかし、過度な飲酒は腎臓に良くありません。過度な飲酒は腎機能低下の原因となる「高血圧」や「糖尿病」に関わります。基本的に腎臓病はアルコールの摂取制限を課せられませんが、これらの合併症やそのリスクがある人は飲酒に注意が必要です。
喫煙
タバコを吸っている人は、腎機能を低下させてしまう可能性があります。腎臓病と診断されたのをきっかけに、禁煙を実行しましょう。
喫煙による高血圧
タバコを吸うと血圧が上がってしまいます。これはタバコの煙に含まれているニコチンが原因であり、血管収縮作用によって血圧が上昇します。
喫煙による糖尿病
タバコを吸うと交感神経が刺激され、血糖値が上昇します。また、タバコを吸っている人はそうでない人と比較してインスリンの働きが悪くなることがわかっており、この2つの特性から糖尿病を発症するリスクを高めることがわかっています。
喫煙による脂質異常症
タバコを吸うと、脂質異常症のリスクを高めることになります。ニコチンを摂取すると遊離脂肪酸が増加し、次第に動脈硬化を引き起こす原因となります。また、糖尿病を患っている患者さんの場合、LDLコレステロールが酸化されることも原因となります。
不規則な生活
不規則な生活を送っていると、腎臓に負担がかかって腎機能を低下させるおそれがあります。
ストレスと腎臓
不規則な生活により精神的なストレスを溜めてしまうと、交感神経が働いて血圧が上昇します。一時的なストレスであれば腎臓への影響もほとんどありませんが、日常的にストレスを溜めてしまうと血圧が高い状態が続き、腎臓への負担が増加します。
また、ストレスが溜まると暴飲暴食、間食によってこれを発散するというケースも珍しくありません。高血圧や高血糖、脂質代謝異常などの原因となり、やはり腎臓への負担の原因となります。
過労と腎臓
過労は肉体的なストレスです。仕事で無理をしたり十分な休息をとれないと肉体的なストレスが溜まり、これも血圧を上昇させて腎臓に負担がかかる原因となります。
睡眠不足と腎臓
睡眠不足は精神的および肉体的なストレスの原因となります。単純に睡眠時間が短いというだけでなく、質の良い睡眠を心がける必要があります。特に就寝前の飲酒やスマホなどは睡眠の質を下げてしまうので、そうした習慣があれば改善する必要があります。
生活態度の中に腎機能を低下させる原因がある
このように、何気ない生活態度が腎臓への負担となり、腎機能を低下させてしまう可能性が考えられます。心当たりがある人は改善し、腎臓への負担が少ない生活を心がけてください。